「自民党の寛容さって、どこへ行っちゃったんだろうね」 新総理「石破茂」がカレーを頬張りながらこぼした“本音”(2024年10月6日『デイリー新潮』)

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「よって石破茂君を本院において内閣総理大臣に指名することに決まりました」
 額賀福志郎衆院議長(80)がそう言うと、議場の最奥部に座った石破茂氏(67)はすっと立ち上がり、周囲の議員に向かって、1回、2回、3回、4回、深々と頭を下げた。10月1日午後2時14分、こうして石破茂政権は発足したのである。
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事務所の棚にはフィギュアがずらり! 石破茂氏の「憧れのアイドル」って?
 議員になって38年、総理総裁の椅子に挑み続けた彼は、この瞬間に何を思ったのか。再び席に着いたとき、しばらくは表情を変えず、誰とも目を合わさず、自問するように何度もうなずいていた。
当時最年少の29歳で初当選
 石破茂首相が初当選した1986年7月の総選挙は第2次中曽根康弘内閣の時だった。大正生まれの中曽根はもとより、明治男の三木武夫福田赳夫もまだ現役の時代。当時最年少の29歳で当選した彼は、間違いなく「坊や」扱いだったろう。
 そんな石破氏は、地元での人気は高く、選挙には勝ち続けた。一方で、得意とするのは「票につながらない」ことで定評があった安全保障の分野。今とは異なり、冷戦期は、この分野に関心があると口にした政治家は、「タカ派」「危ない奴」とレッテルを貼られるのが常だった。
 それでも、冷静で丁寧な語り口、そして「オタク」ぶりなどで全国的な知名度を得ることとなっていく。
突然の撮影依頼にも“太っ腹”
 趣味の中で最も有名なのは、鉄道だろう。
 2013年12月、秋田での行事の帰り、寝台特急「あけぼの」に乗り込んだ石破氏。「(翌年廃止の『あけぼの』に)何としても、執念で乗ろうと思っていました」と鉄道オタク全開で語ってくれた。
 この時の彼のポストは、2度の総裁選出馬を経験した幹事長。それなのに突然の撮影依頼にもフランクに応じてくれた。メディアへのサービス精神が旺盛なこともよく知られているところだ。「ダウンタウンガキの使いやあらへんで!」の年末特番にサプライズ出演したこともある。
「私が口を閉ざしたらどうなるんですか」
 認知度も人気も高まり、世論調査では常に「総理候補」として名前が取り沙汰されるようになっていく。しかし、それでも総理総裁への道は、まだ遠かった。
 18年、3度目の総裁選は安倍晋三首相との一騎打ち。もちろん安倍氏の勝利だったが、この時、相当数の議員票が石破氏に流れたということで起こったのが、俗に言う「カツカレー事件」である。すなわち安倍陣営でゲン担ぎのカツカレーを食べたのに、石破氏に投票した議員は誰だ、という“食い逃げ犯”探しが行われたのである。
 なんとも息苦しいばかりの当時の党内状況について、無役となった石破氏は、議員会館でカレーを食べながらこんなふうに語ってくれた。
自民党の寛容さって、どこへ行っちゃったんだろうね」「この党では意見を言うことが、相手を批判したり、侮辱することだとされ、誰も何も言えない状況。私が口を閉ざしたらどうなるんですか」
 かくして口を閉ざさず、総裁選の敗北をもう一度乗り越えて、ついに石破氏は総理総裁の椅子を手にしたのである。
撮影・土居 誉/西村 純/本田武士
週刊新潮」2024年10月10日号 掲載
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