総裁選党員調査で高市氏が小泉氏上回る 「解雇規制」「夫婦別姓」で受け身に 有元隆志(2024年9月22日『週刊フジ』)

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高市氏(写真)と、小泉氏は総裁選の演説会で発言した

自民党総裁選(27日投開票)は中盤に入り、石破茂元幹事長(67)、高市早苗経済安保相(63)、小泉進次郎環境相(43)の3人が、上位2人による決選投票を目指して激しく争う展開となっている。

ある調査機関が16日、全国の自民党員2097人を対象に行った意識調査で、高市氏が小泉氏を上回ったことが分かった。

今回の総裁選では、国会議員票(367)と同数の党員・党友票(367)の重みが増している。このためか本紙が報じた自民党員を対象に行った調査が、いつの間にか自民党の調査として一部で報じられ、党側が否定する事態となった。ここでは党の調査ではないことを明確にしておく。

そのうえで、16日の調査を受け、9候補が獲得する票数をドント式で計算すると、石破氏が129と相変わらず首位を独走し、高市氏が80、小泉氏が63と続いた。前回8日の調査では、石破氏130、小泉氏87、高市氏59だったので、石破氏1減、小泉氏24減、高市氏21増となった。

上位3人のほかは、上川陽子外相(71)が26、林芳正官房長官(63)が22、小林鷹之前経済安保相(49)が19、茂木敏充幹事長(68)が12、河野太郎デジタル担当相(61)が10、加藤勝信官房長官(68)が6だった。

高市氏と小泉氏が党員票で逆転した背景としては、小泉氏の討論会などでの受け答えを見て、「果たして、首相としてふさわしいのか」という疑問符が広がったことが挙げられる。

高市氏と、小泉氏(写真)は総裁選の演説会で発言した

小泉氏は「選択的夫婦別姓」と「解雇規制の緩和」を1年以内に実現すると掲げた。他の候補から解雇規制をめぐって「企業が解雇しやすくなるのではないか」との指摘が相次ぎ、小泉氏は「緩和」ではないと打ち消す発言を繰り返すなど受け身に立たされている。

他陣営の幹部は「小泉氏には、父・小泉純一郎元首相のブレーンがついているのかもしれないが、『解雇』という重いテーマを1年以内に実現するのは無理がある」と批判する。

同時に、選択的夫婦別姓についても、「小泉氏の持論かもしれないが、自民党員は一般国民よりもこのテーマについては慎重論が多いことぐらいは小泉陣営も分かっているはず。テーマ設定に誤りがある」と指摘した。

対照的に高市氏は公約で、「総合的な国力の強化」を前面に打ち出した。政調会長としての経験を生かし、エネルギー、農業、外交・安全保障など多岐にわたる分野を掲げた。さらに、出馬会見で、2021年の総裁選で、高市氏を支持した安倍晋三元首相から「女性初の首相、いいじゃないか」と言われたことを紹介し、「(安倍氏の)言葉を胸に全力投球していく」と述べ、党の保守層に訴えた。

2021年の教訓から党員票獲得に尽力

高市氏は21年の反省から党員票獲得に力を入れてきた。作家でジャーナリストの門田隆将氏とともに地方行脚も繰り返した。こうした地道な努力の結果、党員の間で支持が拡大しているといえる。

ただ、国会議員票では小泉氏が依然として高市氏をリードしている。27日の投票日まで熾烈(しれつ)な上位争いが展開されそうだ。

産経新聞特別記者)

有元隆志「ニュース裏表」(zakzak)