小学2年生の女児が6年生の男児に性的被害を受けた問題を巡り、保護者の質問に対しての茅ケ崎市教育委員会の回答書。「他の児童から性被害の相談・情報提供もなかったため、未然に個別指導はできない状況」と説明している
神奈川県の茅ケ崎市立小学校で5月、2年生の女子児童が学校内で複数の6年生の男子児童に下半身を触られる性的被害に遭い、保護者が学校側の対応に不信感を募らせている。学校側は被害を認識しながら、その後の学校行事で女児と加害者を鉢合わせさせるなど配慮に欠く対応を重ね、女児が心の傷を負う2次被害にも発展した。児童間の性的被害が表面化するケースは珍しく、性暴力問題に詳しい専門家は「学校現場が被害者保護だけでなく、加害者指導にも責任を持たなければ再犯する恐れがある」と指摘している。
女児の保護者によると、女児は休み時間に友人と学校の図書室にいたところ、6年生の男児3人が近づいてきて、服の上から下半身を複数回に渡って触わられたという。女児が友人とやりとりしたSNSを保護者が見て発覚。学校に連絡し、加害男児3人の保護者との話し合いの場が持たれた。2人は体に触ったことを認め、「女性の体に興味があった。以前も(他の女児に)いたずらしたことがある」と説明したという。
同市教育委員会は神奈川新聞社の取材に「複数の男児が女児の体に触れたことは事実だが、人数や体の部位は言えない」と回答した。また、保護者は茅ケ崎署にも被害を相談。ただ14歳未満の「触法少年」は刑法の定めで刑事罰に問われることはないという。
その後、6月に学校で津波被害を想定した避難訓練が行われ、2年生は上階の6年生の教室に教員の誘導で避難。女児は加害男児と同じ教室に連れて行かれ、男児の姿を見たことから体調が悪化。40度近い高熱を何度も繰り返して学校を欠席することが多くなり、医師からは心的外傷による急性ストレス障害と診断された。
女児は「暗くなると足元から手が伸びてくる気がする」と悪夢におびえ、学校では女性職員の付き添いなしで一人でトイレに行くこともできなくなった。しかし、担任の男性教諭から「トイレまで(加害者が)来るわけないだろ」などと言われ、心の傷を深くしたという。
さらに7月の夏休み前に女児が1人で呼ばれ、複数の教員が加害男児の「反省の言葉」を代読するのを聞かされた。事前に保護者にも市教委にも相談なく行われ、女児は「(男児らに)もう関わりたくない」と再び恐怖心を抱いたという。
市教委は取材に対し、「学校側が良かれと思ってやったことが結果的に女児を傷付けてしまった。学校側の対応に度重なって配慮が足りていなかった」と釈明した。一方、保護者は「学校側は自分たちの保身ばかり。性的被害がどれだけ心を傷付ける重い事件なのか向き合い、調査や他の保護者への公表など再発防止の姿勢を見せてほしい」と訴えている。