【総裁選告示】歴代最多の死刑囚16人に執行で「生涯SP付き」の上川陽子外相、外務省内でささやかれる一抹の不安「ブリンケン会談で想定問答100ページを作らされ…」(2024年9月14日『NEWSポストセブン』)

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9月11日、自民党総裁選への出馬について記者会見する上川陽子外相(時事通信フォト)
「全国の皆さまから、日本初の女性総理になってほしいとの声を寄せてもらった」「日本の総理として、難問から逃げず、新たな日本を築いていきたい」──自民党総裁選が9月12日、告示された。前日の11日午後に出馬の記者会見を開いた上川陽子外相。高市早苗経済安全保障担当相に続き、女性で総裁選への出馬を表明したのは2人目で、立候補に必要な20人の推薦人確保にこぎ着けた。
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「上川氏は東京大学を卒業し、三菱総研の研究員を務めた後、米ハーバード大大学院を修了しています。輝かしい経歴を引っ提げ、2000年の衆院選静岡1区で初当選を果たし、現在7期目です。
 上川氏が『初の女性首相』候補と目されるきっかけとなったのは、法相時代の2018年7月に行ったオウム真理教の元教祖、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚ら13人に対する死刑執行です」(大手紙政治部記者)
 日本における死刑執行は、法相による執行命令から5日以内に行わなければならないと定められており、その判断は事実上、法相に委ねられている。法相の職責は死刑執行命令書に署名するという重たいものであり、宗教上の理由などから在任中に一度も執行命令を下さなかった法相も少なくない。
「上川氏は3回あった法相在任中、計16人の死刑囚に対し、執行命令を下しています。これは法務省が1998年11月から死刑執行の公表を始めて以降、最多です。上川氏はただでさえ重い死刑執行の判断という職責を数多く果たしたのみならず、地下鉄サリン事件をはじめとする未曾有のテロを実行したオウム真理教の確定死刑囚に対する刑の執行を決断したのです。
 オウム真理教の死刑囚に対する刑の執行は、オウム関係者からの報復を招きかねない。通常、閣僚の任を離れ、党の要職にでも就かない限りはSP(セキュリティーポリス)の警護対象から外れますが、上川氏にはSPが法相離任後も警護を続けていて、永田町では『生涯SP付き』とも言われています」(前出・政治部記者)
 そうした決断を毅然とやってのけたことから、「胆力がある」「腹が据わっている」などと自民党内で上川氏の評価は急上昇し、「初の女性首相」候補の一群に名を連ねるようになった。
 昨年9月には、女性では約20年ぶりとなる外相に就任し、外交デビューを果たした。上川氏の仕事ぶりについて、麻生太郎副総裁は「このおばさん、やるねえ」と持ち上げ、「そんなに美しい方とは言わないけれども、堂々と、英語もきちっと話をして、自分でどんどん会うべき人たちの予約を取る。あんなふうにできた外相は今までいない」と評価した。容姿に言及した麻生発言は批判を浴びたが、その手腕を認めての言葉に、上川氏は「ありがたく受け止めております」と返した経緯がある。
外務省での評判は
 胆力を示す一方、パフォーマンスには走らない手堅い実務型の政治家として評価を集め、11日の出馬表明にこぎ着けた上川氏。しかし、同氏に仕える足もとの外務省からは、そうした評価とは異なる手厳しい批判がちらほら……。
「熱心なのは結構だが、上川氏はとにかく細かい。『そんなところまで突っ込んでくるか』というぐらいで、支える側は疲れ切っているのが実情なんです」
 そうこぼすのは外務省の中堅官僚だ。この中堅官僚によると、上川氏が外相に就任以降、国会答弁づくりや外遊準備に要する業務量は格段に増加したという。
「今年4月、上川氏が岸田文雄首相とともに訪米した際は、米国のブリンケン国務長官と会食で同席することとなり、その準備作業に上川氏は神経をとがらせたんです。会食に向けて準備した想定問答集は、上川氏の微に入り細を穿つ突っ込みを経て100ページに及ぶ分厚い資料になりました。
 しかし、会食で想定問答集が役に立ったのはごく一部で、、事務方の膨大な準備作業は徒労に終わった感が否めないんです……」
 歴代、わずか3人しかいない女性外相に名を連ねた上川氏。外務省を「伏魔殿」と称したのは、小泉純一郎政権で女性初の外相を務め、同省に大きな混乱をもたらした田中真紀子氏だ。ある幹部は「『田中真紀子の再来』とまでは言わないが……」と口を濁した。
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 自民党総裁選の火蓋が切られた。国民が待望する初の女性首相誕生となるのか。2人の女性候補者について取材した。(後編”高市早苗氏”に続く)