兵庫県の斎藤元彦知事が職員へのパワーハラスメント疑惑などを文書で告発された問題で、県議会の調査特別委員会(百条委)は5日午前、告発者の元県西播磨県民局長の男性(7月に死亡)が公益通報をしたにもかかわらず懲戒処分を受けたことについて、参考人の奥山俊宏・上智大教授から見解を聞いた。
内部告発者の保護法制に詳しい奥山教授は県の対応について、「知事らは告発の矛先を向けられている当人であり、告発文書に関する判断から自ら身を引くべきだったが、正反対の行動を選んだ。冷静な対応ができず、まるで独裁者が反対者を粛清するかのような陰惨な構図を描いてしまった」とし「独立性を確保し、利益相反を排除すべきだった。公益通報者保護法の趣旨を逸脱している」と指摘した。
一連の問題は元局長が3月、知事のパワハラを含む七つの疑惑を告発する文書を報道機関や県議に配布したことで発覚した。
元局長は県の公益通報窓口にも通報したが、県は通報者への不利益な扱いを禁じた公益通報者保護法の対象外と判断。内部調査を進めた結果、「核心部分が事実ではなく、誹謗(ひぼう)中傷に当たる」と断じ、元局長を停職3カ月の懲戒処分にした。
元局長は7月、県内の親族宅で亡くなっているのが見つかった。処分に踏み切った県の対応に問題がなかったか百条委で調査が進められている。
知事は8月30日にあった百条委の証人尋問で告発文について「事実でないことが多く含まれ、誹謗中傷性が高いものだと判断して調査した」と説明。元局長を処分したことは「適切だと思っている」と正当性を主張した。
一方、百条委では県職員が「公益通報の結果が出るまで処分しないほうがいい」と進言していたことが明らかになっている。【洪玟香、古川幸奈】
告発者処分のキーマン、前総務部長が百条委欠席 心身の不調や殺害予告理由に(2024年9月5日『産経新聞』)
兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などが文書で告発された問題を巡り、県議会調査特別委員会(百条委員会)が5日午前、始まった。冒頭で、午後に証人として出頭予定だった前総務部長の井ノ本知明氏は、心身の不調や脅迫があったことなどを理由に欠席することが報告された。
井ノ本氏は県の人事当局トップとして、文書を作成、配布した元県西播磨県民局長の男性(60)=7月に死亡=の懲戒処分を主導したとされる。証人尋問では、当時の経緯や斎藤氏とのやり取りなどについて、どのように証言するか注目されていた。
8月に病気療養を理由に総務部付(部長級)に異動。告発内容とは関係がない男性の私的情報を漏洩(ろうえい)した疑いがあるとして、県は井ノ本氏の調査を検討している。井ノ本氏は、心身の不調が回復しないことや自身への殺害予告があったことなどを挙げ、4日付で欠席届を提出したという。
午後には、県内企業から高級コーヒーメーカーを受領した産業労働部長の原田剛治氏が証言する。受領が判明した直後、原田氏は斎藤氏からの指示について否定していた。
原田剛治氏
6日には、元副知事の片山安孝氏と、斎藤氏の証人尋問が予定されている。
6日には、元副知事の片山安孝氏と、斎藤氏の証人尋問が予定されている。
片山安孝氏
兵庫県の斎藤元彦知事をめぐっては今年3月、県の元幹部(60)がパワハラなどの疑惑を一部の報道機関などに匿名で告発。さらに4月には、県の公益通報制度を利用して内部通報していました。しかし、県はいずれの告発も「公益通報」として扱わず、内部調査により元幹部を告発者と特定。停職3か月の懲戒処分を出しました。
(兵庫県 斎藤元彦知事 5日)「(県が行った懲戒処分の対応は)法的にも裁判になっても対応できる。私としても問題ないと思います」
5日午後からは、県の内部調査に協力した弁護士らが証人として出頭する予定です。