「昭和34年9月26日…(2024年8月30日『毎日新聞』-「余録」)

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伊勢湾台風接近で避難する住民=名古屋市南区道徳通で1959(昭和34)年9月26日
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吹き飛ばされた建物の屋根のような金属板が電線にからみついていた=宮崎市東大淀で2024年8月29日午前8時35分、下薗和仁撮影
 「昭和34年9月26日。この日潮岬西方より紀伊半島に上陸した台風15号は各地に甚大な被害を与えた」「すべては17年前のこの日から始まったのだ」。冒頭、台風の実写シーンに合わせ、ナレーションが流れる。山口百恵さん主演のテレビドラマ「赤い運命」である
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▲TBS系で放送された赤いシリーズの第3弾。当時17歳の百恵さんが生まれた1959年の伊勢湾台風で生き別れになった親子が描かれた。5000人以上が犠牲になった過去最悪の台風被害の記憶がなお鮮明だった頃だ
▲上陸時の中心気圧929・5ヘクトパスカル、最大瞬間風速は48・5メートル。伊勢湾に面した名古屋周辺では3メートルを超える高潮が大きな被害をもたらし、災害対策基本法の制定につながった
▲台風に伴う特別警報は「伊勢湾台風級」が基準。台風10号では4回目の特別警報が出された。その後、警報や注意報に切り替わったが、低速で列島縦断にもかなり時間がかかるというから始末に負えない
伊勢湾台風当時はトランジスタラジオやテレビの普及初期。停電で放送を聴けなかった住民も多かった。満潮が重なり、予想以上の高潮が発生したが、襲来が土曜で避難指示など自治体の対応が遅れたという
スパコンを使う現在の天気予報の精度は65年前よりはるかに高く、通信手段も発達した。注意すべきはSNSで流れるデマか。台風10号の予報円は週明けまで列島にとどまっている。準備や警戒を怠らず、被害を最小限に抑えたい。<台風の潮位の無線刻々と/真砂松韻>