石破元幹事長 総裁選に立候補を表明「全身全霊で臨んでいく」(2024年8月24日『NHKニュース』)

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自民党石破茂元幹事長は地元・鳥取の神社で演説し、「ルールを守り、地方を守り、未来を守るために全身全霊で臨んでいく」と述べ、岸田総理大臣の後任を選ぶ自民党総裁選挙に立候補することを表明しました。
石破元幹事長は24日午前、自身の地元・鳥取県八頭町の神社で支援者を前に演説しました。
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この中で石破氏は「自民党総裁選挙に立候補する。38年間の政治生活の集大成として、これを最後の戦いとして原点に戻り、全身全霊で支持を求めていく」と述べ、総裁選挙に立候補することを表明しました。
その上で「党よりも国民一人一人を見るのが私の政治生活の原点だ。子どものころ、ここで夏祭りがあり本当ににぎやかだった。日本は今ほど豊かではなかったが、若い人も、子どもたちも、高齢者も皆、笑顔だった。もう一度にぎやかで皆が笑顔で暮らせる日本を取り戻していく」と述べ、地方の再生に全力を挙げる考えを強調しました。
また、党の政治とカネの問題をめぐり「ルールを守り政治のためのカネが必要なら集め方は節度を持たなければならない。改正された政治資金規正法を守るのは当然で、さらに透明性を深めるための努力を最大限に行う」と述べ、政治改革に取り組む考えを示しました。
さらにみずからが長く安全保障政策に携わってきたことに触れ、「抑止力の強化や防衛力の強化は平和のためのものであり、戦争をするためのものではない。どうすれば抑止力が確保でき、どうすれば多くの国と信頼関係を築くことができるか。安全保障を確立し日本を守る」と述べました。
そして「ルールを守り国民に信頼される政治。日本を守り、国民を守り、地方を守り、そして未来を守る。そのために全身全霊で臨んでいく」と決意を示しました。
このあと石破氏は記者団の質問に応じ、政治とカネの問題への対応を問われたのに対し「いわゆる裏金事件の審判は、国民からいただかなければならない。自民党として国民に対して責任を持たなければならない。誰が総理・総裁になるにせよ審判を仰ぐのは、なるべく早い時期に行われるべきだ」と述べました。
また、自身の強みを問われたのに対しては「強みというおこがましいことを言うつもりはないが、あるとすれば経験だ。必要なのは刷新感ではない。本当に刷新されたかどうかだ。未来は、過去の延長線上にある」と述べました。
一方、「選択的夫婦別姓」の考え方を質問されたのに対し「選択的に姓を選べることはあるべきだ。男性であれ女性であれ姓が選べないことでつらい思いをし、不利益を受けていることは解消されなければならない」と述べました。
石破氏が総裁選挙に挑戦するのは今回が5回目となります。総裁選挙への立候補表明は、小林鷹之氏に続き石破氏が2人目です。
立候補表明後 父親の墓参りに
石破元幹事長はこのあと、鳥取県知事や自治大臣を務めた、父親で元参議院議員の二朗氏の墓参りをしました。そして記者団に対し「『大それたことをしてお怒りでしょう。お許しください。お守りください』と報告した」と述べました。
石破氏プロフィール
石破氏は、衆議院鳥取1区選出の当選12回で、67歳。総裁選挙には5回目の挑戦となります。
鳥取県知事や自治大臣を務めた石破二朗氏の長男として生まれました。
慶応大学を卒業後、銀行に勤めていましたが、田中角栄・元総理大臣の勧めで政治の世界に入りました。
田中派の事務局職員を経て1986年の衆議院選挙に立候補し、当時、全国最年少となる29歳で初当選します。
そして、リクルート事件をきっかけに党内の若手議員が結成した研究会に参加し、小選挙区制の導入など政治改革を訴えました。
1993年には、政治改革法案の取り扱いをめぐって、野党が提出した宮沢内閣に対する不信任決議案に賛成して自民党を離党。新生党新進党を経て、1997年に自民党に復党しました。
2002年に小泉内閣防衛庁長官として初入閣し、防衛大臣農林水産大臣を歴任しました。
自民党が野党だった2012年の総裁選挙では最も多くの党員票を獲得しましたが、決選投票で安倍元総理大臣に敗れました。
第2次安倍政権発足後は、党の幹事長や地方創生担当大臣として政権を支えましたが、退任したあとは、安倍氏と距離を置きます。
4回目の挑戦となった2020年の総裁選挙では菅前総理大臣に敗れ、前回・3年前の総裁選挙には立候補せず河野デジタル大臣を支援しました。
2015年に当時の安倍総理大臣の後継を目指したいとして立ち上げた派閥は、所属議員の減少などを受けて3年前に事実上解散しています。
ここ数年は、近い議員と政策勉強会を重ね、全国各地を回って講演するなど活動を続けてきました。
今回、党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題が表面化してからは「カネに左右されない政治をつくるべきだ」と述べるなど、政治改革の必要性を繰り返し訴えてきました。
「鉄道オタク」を公言 料理好きな面も
安全保障政策に精通していることで知られ、戦闘機や軍艦のプラモデル作りを趣味としていることもあって「防衛オタク」とも呼ばれています。
また、東京と地元・鳥取の間をあえて鉄道で移動するなど「鉄道オタク」であることも公言しています。
かつての人気アイドルグループ「キャンディーズ」のファンで、ラジオ番組に出演した際、彼女らの解散宣言に触れ「キャンディーズに及びもつかないが、普通のおじさんに戻りたい」と述べて話題になりました。
夏目漱石森鴎外といった文学から漫画まで幅広い分野の本を読む読書家で、議員会館の事務所には本棚に収めきれない専門書などが机や棚に平積みされています。
料理好きとしても知られ、得意料理のカレーライスをふるまうこともあります。
ラーメンの文化振興を目指す議員連盟の会長も務め、各地で食べ歩いてみずから“振興”を図っているということです。

石破茂氏、総裁選出馬を正式表明 5回目の挑戦、「最後の戦い」に(2024年8月24日『毎日新聞』)
 
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自民党総裁選への出馬を表明する石破茂元幹事長=鳥取県八頭町で2024年8月24日午前11時4分、川口峻撮影
 自民党石破茂元幹事長(67)=衆院鳥取1区=は24日、自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)への立候補を地元の鳥取県八頭町の神社で正式に表明した。立候補に必要な推薦人20人のめどを付けての出馬表明は小林鷹之前経済安全保障担当相(49)に続き2人目。5回目となる総裁選への挑戦を「最後の戦い」と位置づけ、背水の陣で挑む。
 石破氏は、派閥の政治資金パーティー裏金事件などを念頭に、「自民党に対する不信がかつてのリクルート事件の時以上に高まっている」と指摘。「政治は変わる、自民党は変わる。それを実現できるのは自分だ。ルールを守る政治、ルールを守る自民党を確立する」と述べ、政治資金の透明性向上などに取り組むと強調した。
 自らが総裁選に勝利して新首相に就任した場合は、速やかに衆院解散・総選挙に踏み切る考えも表明。「全閣僚出席の予算委員会を一通りやって、政権が何を考えているのか、何を目指そうとしているかを国民に示せた段階で、可能な限り早く信を問うべきだ」と語った。
 政権批判も辞さない物言いで知られる石破氏は、報道各社の世論調査で「次の首相にふさわしい人」のトップ常連。2008年以降、過去4回出馬した総裁選では国会議員票が伸び悩むなどして苦杯をなめ続けてきたが、「政治とカネ」を巡り自民に逆風が吹く今回は、次期衆院選の「顔」になり得る存在として、同僚議員らから待望論が上がっていた。
 石破氏はこうした声を背景に水面下で推薦人集めに取り組みつつ、政治への思いや自身の政策をまとめた著書を今月出版。23日には今回の総裁選について「38年間の政治生活の総決算。原点に戻って最後の戦いに挑む」と記者団に語り、出馬表明を「初めて一軒ずつ頭を下げて歩き始めた地元」で行う方針を示していた。
 石破氏は慶応大卒。三井銀行(現三井住友銀行)勤務などを経て1986年に自民公認で衆院初当選し、現在12期目。防衛相や農相などを歴任し、第2次安倍政権では党幹事長や地方創生担当相を務めた。父は鳥取県知事や自治相などを歴任した故・二朗氏。
 一方で、09年の麻生政権末期、閣僚(農相)の立場でありながら「麻生降ろし」に加わるなど石破氏の過去の言動を問題視する党実力者も多い。2度目の挑戦だった野党時代の12年総裁選では党員票の過半数を得たものの議員票のみによる決選投票で安倍晋三氏に逆転を許した。18年総裁選で安倍氏との一騎打ちに敗北。菅義偉首相を誕生させた20年総裁選は候補者3人中最下位で、直近21年総裁選への出馬は見送っていた。
 総裁選には10人超が出馬に意欲を示しており、26日に河野太郎デジタル相(61)が、早ければ30日には小泉進次郎環境相(43)が出馬を表明する方向だ。【川口峻】

自民総裁選出馬表明の石破氏「5度目の正直」なるか 高い知名度も議員票獲得に課題(2024年8月24日『産経新聞』)
 
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石破茂元幹事長は24日、鳥取県八頭町で総裁選出馬表明
 
自民党総裁選への出馬を表明した石破茂元幹事長(67)は、常に「次の首相にしたい政治家」の上位に名前が挙がる。ただ、同僚である自民議員からの信頼は薄く、これまでに挑んだ4度の総裁選ではいずれも苦杯をなめた。「政治生活の集大成」「最後の戦い」と位置付ける今回は、過去の反省を生かして〝5度目の正直〟を目指す。
石破氏は24日、地元の鳥取県八頭町で出馬を表明した。記者団に「今度の戦いを政治生活の集大成、最後の戦いと位置づけて全身全霊で臨んでいく」と語った。
自民派閥のパーティー収入不記載事件を念頭に、「ルールを守る政治、ルールを守る党を確立する」と強調。衆院解散・総選挙の時期に関しては、「新体制になれば可能な限り早く国民の審判を仰がなければならない」と語った。
ライフワークの国防については「安全保障を確立して日本を守る」と主張し、持論の「防災省」の設立にも触れた。また、リベラル系の支持獲得を念頭に、選択的夫婦別姓制度の導入に前向きな姿勢を示したほか、「原発ゼロ」に向け最大限の努力をしていくとした。
知名度が高い石破氏の強みは世論の後押しだ。過去の総裁選では全国の党員・党友による地方票を多く集めて善戦。自民関係者は「今でも全国の地方組織が講師に招くなど人気は絶大だ。今回も地方票を多く獲得するだろう」と分析する。石破氏自身も「(勝敗の行方は)地方票の出方次第だ」と周囲に漏らす。
対照的に党内の国会議員からの評価は高くない。「上から目線」(自民幹部)との指摘があり、過去には政権・党執行部批判が「後ろから弾を撃つ」と不興を買った。農林水産相時代には2008(平成20)年のリーマン・ショックによる経済不況で支持率が低迷した麻生太郎首相(当時)に退陣を求めた。
「同じ政党にいるからこそ忌憚なく意見を言い、改めるべきは改めるのが、政権を守る、ということ」
石破氏は7日に出版した新著「保守政治家 わが政策、わが天命」(講談社)でこうつづった。周囲にも「岸田(文雄首相)さんや安倍(晋三元首相)さんのことも個人攻撃はしたくない。それでも、これまでの政権の政策は検証すべきだろう?」とこぼすが、不信感は払拭できていない。
過去の総裁選では地方票で他候補を圧倒しながら、国会議員票中心に争われる決選投票で覆される場面があった。5度目の正直に向けては、同僚議員の支持を集めることが喫緊の課題となる。
石破氏は24日、地元で記者団に「独りよがりや多くの方々の理解を得る努力の不足があったことは率直に認める。あとわずかの間にどれだけ乗り越えられるのか、自らにその課題を課して全力を尽くしていく」と述べた。(末崎慎太郎)