自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)を巡り、お金のかからない選挙戦をどう実現するかが課題となっている。党派閥の「政治とカネ」の問題を受け、多額の費用をかければ国民の批判を招きかねないためだ。活動を制限することには慎重論も根強く、実効性の確保が問われそうだ。
「温床」
「党が厳しい指弾を受けている状況を重く受け止め、金のかからない事前の準備に努力してもらう」
告示前の活動を巡っては、現状、政策を訴えるチラシの郵送や、自動音声などで支持を呼びかける電話かけについて制限がない。告示後の選挙期間中はチラシの郵送が禁じられている一方、電話かけは制限がない。
党員は2023年末時点で約109万人に上る。全国の党員に働きかけるには「郵送で1億円、電話で1000万円かかる」(渡海政調会長)とされ、「金のかかる総裁選の温床」と指摘されてきた。選管はこの日の会合で、活動に巨額の費用をかけないよう自粛を求める方針を確認したが、違反しても「罰則は念頭にない」(逢沢氏)ことから、どこまで実効性を確保できるかは見通せていない。
下がるハードル
金のかからない総裁選について、目立った異論は出ていない。出馬に向けた資金面のハードルは下がることが見込まれ、10人超が出馬に意欲を示す乱立状態の背景となっている。岸田首相(党総裁)は20日の党役員会で「総裁選のプロセス自体が新生自民党を国民に示すものとなる。真剣勝負の議論を展開してもらいたい」と述べ、活発な政策論争を求めた。
選挙期間は現行規程で最長の15日間となり、選管は地方での演説会や討論会の機会を最大限確保する方針だ。多数の立候補が見込まれ、警備上の安全確保策や聴衆の暑さ対策も課題となる。候補者が多ければ、最初の投票で決着がつかず、決選投票にもつれ込む可能性が高い。この日の会合では1回目の投票で複数の候補者が同数で2位となった場合、どう勝敗をつけるかについても議論されたが、結論は出なかった。
選管は9月上旬に次回会合を開き、こうした論点を協議する。選管は中立の立場とはいえ、「各陣営の思惑も絡み合い、結論は簡単に出ないだろう」(中堅)との見方も出ている。