【独自】「進次郎つぶし」のために小林鷹之を出馬させた「ライバル政治家」がやっていること《自民党総裁選》(2024年8月20日)


現代ビジネス

20人をあっという間に集めて

自民党総裁選が混戦している。石破茂元幹事長、小泉進次郎環境相河野太郎デジタル相の「小石河」が注目を集めるなか、突然急浮上したのが小林鷹之前安全保障担当相だった。「コバホーク」との愛称も浸透しつつあり、早くも推薦人20人を集め、8月19日には記者会見を行った。

【写真】石破茂が語った「総理大臣という天命」

「20人集めるのは、本当に早かったですね」 こう語るのは、小林氏を応援する衆議院議員のA氏。この議員によれば、小林氏は岸田首相の辞意を予測していたのかのように、7月から極秘に会合を重ねてきたという。 派閥解消前は二階派に所属していた小林氏は、麻生派甘利明元幹事長の覚えもめでたく、当選4回で入閣を果たしている。

A氏によれば、小林氏の応援団の中心は、安倍派のホープでもある、福田達夫元総務会長だ。福田氏は、父親の福田康夫氏、祖父の福田赳夫氏がいずれも総理となった政界のサラブレッド。すでに党三役の総務会長も経験している。 東大から財務省に入省し、アメリカの米ハーバードケネディ行政大学院に留学した小林氏もエリート官僚の出身だが、永田町の論理では福田氏の方がはるかに「格上」の存在だ。

「本来、福田氏自身が出馬してもおかしくなかった。しかし、裏金事件もあって今回は断念した。派閥が解消されてから初めての総裁選であり、議員の思いがダイレクトに反映される。自民党は古い世代が仕切っていてはいけないと考えた福田氏は、当選4回の同期の小林氏を擁立するべくチームを組んだのです」

先を越されてたまるか

A氏はそう説明する。事実、福田氏自身も94万円の裏金を受け取り、政治資金収支報告書の訂正を余儀なくされており、いまだ傷は癒えていない。 福田氏がなぜ小林氏を擁立したのか。A氏によれば、もう一つの理由があるという。小泉進次郎氏の存在だ。

今も、安倍派に睨みを利かす、森喜朗元首相は総裁選前に、小泉氏の父・小泉純一郎元首相などと会食し、 「純一郎元首相は安倍派だった。進次郎氏が総裁選に出馬するなら安倍派で支援をすればよい」 と語ったと報じられた。

「福田氏は当選4回、小泉氏より1期下になるが、どちらも将来は自民党を背負って立つ人物です。小泉氏は岸田首相の派閥解消もあり、総裁選には確実に出てくるでしょう。今回出馬を見合わせた福田氏は小泉氏をライバル視しており、小泉氏の台頭には我慢ならないところがあると思う」(A氏) 自民党では、総裁選に出馬することは何を意味するのか。

「推薦人20人を集め、総裁選に出るというのはある意味、スターの証です。政治家としての将来は非常に有望視される。それが自民党の伝統だ」 こう話すのは、政治評論家の田村重信氏だ。小泉氏が先に総裁選に出馬となれば、福田氏は先を越された格好となる。それを防ぐため、派閥の縛りがなくなり、自由に動ける中で、当選4回以下の若手を束ねて小林氏をという態勢を作り、実際に出馬表明させたのである。

小林氏に推薦人が流出

小林氏も福田氏に呼応するように、8月11日のフジテレビの番組に出演。萩生田光一氏が政調会長の辞任を余儀なくされたことにはじまり、裏金事件で自民党の役職や委員長ポストから外されている安倍派の議員について 「やりすぎると現場が回らない。処分を受けた方も優秀だ」 と「安倍派外し」を再考すべきと、福田氏を擁護するかの発言をした。

19日に出馬表明した小林氏の急上昇に対し、小泉氏を支援する自民党の若手議員・B氏はこう警戒心を滲ませる。

「小泉氏が勝つパターンは、若手の代表として年長者と激突する総裁選という構図に持ち込むことが大事。しかし小林氏が出馬することが決まったので、若手同士で票を食い合うことになる。 小泉氏は父・純一郎元首相が安倍派で、一定の支援が見込めると計算している。

また、小泉氏を支援すると思っていた若手も小林氏の推薦人に加わった。こちらから連絡しても、なかなか返事をしてこないから、おかしいと思っていた。推薦人にとカウントしていた人が、小林氏に流れたんです。 慎重で総裁選への発言を控え気味にしている小泉氏ですが、その間隙をついて手練手管の福田氏がうまく、小泉包囲網を引いている感じがする」 今回の総裁選は自民党の党員の投票もあり「人気度」がカギになる。

コバホークとして売り出す小林氏だが、世論調査の数字では、知名度の高さもあって小泉氏が圧倒的に凌駕しているのは明らかだ。 また、小林氏が福田氏を気遣ったのか、安倍派の裏金議員を「不問に」という発言も、総裁選には大きなマイナスになる。

「小泉氏にとっては包囲網だろうが、それを突破する迫力がないと総裁選では勝てない。岸田首相は記者会見で自民党は変わるべきと、何度も発言した。この2人が激突するような展開になれば、それこそ自民党が変わったことになる」(田村氏) 「小泉包囲網」を打ち破ることはできるのだろうか。

現代ビジネス編集部