【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】マミー 毒物カレー 無罪訴える(2024年8月18日『沖縄タイムス』)

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 桜坂劇場で働き始めた頃、「ドキュメンタリーは嘘をつく」というドキュメンタリーを見た。うそをまるで本当のことのように伝えることは容易だということが、実演を交えて描かれていた。その的確さが逆に怪しく思えてくるほどに、分かりやすかった。ドキュメンタリー=真実だとぼんやり考えていた脳が、高速で動き出し、世の中のいろんなことが怪しく思えてきて「全てを疑う」という言葉の意味を明確に理解した。
 
 さて、この映画。すでに結審している和歌山毒物カレー事件の判決に異を唱え、林眞須美氏の無罪を訴える問題作。前述した通り、疑うことを覚えた私が、この訴えをうのみにすることはない。ただ、彼女の罪の有無の議論とは別のところに、この映画のエンターテインメント性はある。肩肘張らず、ご覧いただけたらうれしいです。
桜坂劇場・下地久美子)
◇同劇場で上映中

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解説
1998年に日本中を騒然とさせた和歌山毒物カレー事件を多角的に検証したドキュメンタリー。
1998年7月、夏祭りで提供されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、67人がヒ素中毒を発症、小学生を含む4人が死亡する事件が起こった。犯人と目されたのは近所に住む林眞須美で、凄惨な事件にマスコミ取材は過熱を極めた。彼女は容疑を否認しており、2009年に最高裁で死刑が確定した後も獄中から無実を訴え続けている。
最高裁判決に異議を唱える本作では、当時の目撃証言や科学鑑定への反証を試み、保険金詐欺事件との関係を読み解いていく。さらに、眞須美の夫・健治が自ら働いた保険金詐欺の実態を語り、確定死刑囚の息子として生きてきた浩次(仮名)が、母の無実を信じるようになった胸の内を明かす。
監督は、「不登校がやってきた」シリーズなどテレビのドキュメンタリー番組を中心に手がけてきた二村真弘。
2024年製作/119分/日本
配給:東風
劇場公開日:2024年8月3日