立憲民主の代表選 現実的な安保政策を語れ(2024年8月18日『産経新聞』-「主張」)

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 立憲民主党は任期満了に伴う代表選を9月7日告示、23日投開票の日程で行うことを決めた。
 枝野幸男前代表が立候補する意向を表明したほか、泉健太代表は再選への意欲をにじませている。野田佳彦元首相の出馬を求める声もある。
 自民党は派閥パーティー収入不記載事件に端を発した「政治とカネ」問題が響き、国民から厳しい目で見られている。それにもかかわらず立民に対する世論の期待は高まっていない。
 原因の一つに、外交・安全保障政策で現実的な政策を示していないことがある。いまだに集団的自衛権の限定行使に反対し、反撃能力の保有には後ろ向きだ。米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設工事にも反対している。
 この政策のまま立民が政権を取れば日米同盟は空洞化する。日本の平和と安全を確保することはできない。旧民主党政権では普天間移設を巡って迷走し、日米関係を弱体化させた。同じ過ちを繰り返すつもりか。
 その一方で、「政策集2022」には「健全な日米同盟の一層の強化」と矛盾したことを記し、平然としている。中国と北朝鮮は核ミサイル戦力の強化に走り、ロシアは核の恫喝(どうかつ)を繰り返している。国民を守るため、緊迫した安保環境にどう臨むのか。候補者は明確にしてもらいたい。
 立民が抱える問題はほかにもある。国の根幹をなす憲法の改正を妨げていることだ。先の通常国会では、改憲と無関係な不記載事件に対する首相や自民の対応の不十分さを理由に、衆参の憲法審査会に積極的に応じなかった。閉会中審査も拒んでいる。「論憲」とは名ばかりで、改憲を阻むために議論を避けていると言わざるを得ない。
 代表選は各種選挙における野党共闘の在り方も争点になる。日米安保条約の廃棄を訴え、自衛隊違憲の立場を崩していない共産党と共闘していては、国民の信頼は得られまい。共産との共闘路線から決別できるかが問われる。
 泉代表も、泉氏の党運営に批判的な小沢一郎衆院議員も次期衆院選での政権交代を訴えている。だが現実路線の政党に生まれ変わらなければ、政権は担えない。候補者のみならず立民の全議員は銘記すべきだ。