8日に宮崎県沖で起きた地震により、気象庁は、南海トラフ巨大地震が発生する可能性が「平時より数倍高まった」としています。はたして、これをどう捉えればいいのか。専門家と検証しました。(8月11日OA「サタデーステーション)
■「平時より数倍可能性高い」なぜ?
8日に発生した宮崎県沖の日向灘を震源とするM7.1の地震。気象庁は10日、地震以降、高知県と愛媛県にある3カ所の「ひずみ観測点」では、地震後に通常見られる変化以外に異常は見られないと明らかにしました。そのうえで「地震活動は依然活発で、収まっているとは言えない」とし、引き続き巨大地震への注意を呼び掛けました。
なぜ可能性が高まるのでしょうか。サタデーステーションは東京大学の笠原名誉教授に話をききました。
南海トラフの巨大地震とは、今回震源となった、九州の日向灘から静岡県の駿河湾にかけての広大なプレートの境界で発生が想定される、マグニチュード8から9の地震です。そして、今回起きた地震も同じくプレートの境界で起きたもので、震源域の西端で「一部割れ」が起きたといわれています。
■”水の移動”が巨大地震を引き起こす?
笠原氏によるとポイントは「水」だといます。
「断層の滑りを決めているのは水なんです。それがプレートの境界や断層面に流体(水)があると、ずるずると滑ってしまって、いっぺんに滑るんですよ。水がプレートの境界をザーッと移動するんです。そして全体が動く」
このようにして、プレートの一部が割れたことで、全体への影響を与える可能性があると指摘します。南海トラフ巨大地震は、今後30年以内に70~80%の確率で発生すると予測され、巨大津波などで甚大な被害が想定されていますが…
「危険度が数倍高くなったと言っているが、それは、非常に(地震の発生が)接近してきたということを意味しています。30年じゃなくて、10年じゃなくて、もっと短くなっている可能性がある」
さらに、今年1月に起きた能登半島地震と連動する可能性も指摘します。
「1944年に東南海地震が起きたが、1年前に鳥取でM7.2の地震が起きた。これは日本海側の地震が東南海地震に影響を与えたとも考えられています。最近では、能登半島で1月に地震が起きた。能登半島もユーラシアの上。鳥取もユーラシアの日本海側にある。ユーラシアプレート側が押されると、フィリピン海プレート側が沈み込むという連動する関係がある。能登半島地震から日向灘地震、南海トラフ地震にうつるとすると、半年か、1年くらいは相当注意しないといけない。仮に連動したとすると非常に危険である」
■”影響は限定的”指摘も 割れる見解
京都大学防災研究所 西村卓也教授
京都大学防災研究所 西村卓也教授
「過去にも同じような地震があって、それは南海トラフ地震には繋がっていないという事実はあります。南海トラフの想定震源域というのも、2012年、東日本大震災の後に見直されてるんですね。それまでは、南海トラフ地震っていうのは実は西は四国の沖合までだったんですけれども、それを日向灘まで広げました。この変更で、想定震源域はおよそ2倍に拡大されました」
今回の地震は、まさに12年前に拡大された西の端で起きたものでした。そして、今回の震源域について、巨大地震の発生域とみられる、特にひずみが溜まってるところからは離れているため、それほど影響しないのではないかといいます。
京都大学防災研究所 西村卓也教授
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高島彩キャスター
板倉朋希アナウンサー
「8日の会見では『地震発生から1週間程度、特に2、3日は大きな地震が発生することが多いということで注意が必要』だということです。実際に2011年の東日本大震災の時も、3月9日にマグニチュード7.3の地震が発生し、その2日後にマグニチュード9.0という巨大地震が起きました」
高島彩キャスター
「今のところ、そのような兆候は観測されていません」
高島彩キャスター
「なぜ3日程度は警戒しないといけないんでしょう」
横田崇氏
「この事例もそうですけど、普通の地震が発生した場合2、3日ぐらい活発な状況が続きます。さらに1週間ぐらいはその場所で同程度の地震が起こる可能性がある。そういうことで、しばらくは注意してもらうことが大事なことになると思います」
高島彩キャスター
「そして、もう1つ心配なのがスロースリップとの関係です」
板倉朋希アナウンサー
高島彩キャスター
横田崇氏
高島彩キャスター
「柳澤さん、どうご覧になってますか」
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏
「監視体制が気になるんですが、広大な想定震源域をカバーするためには、果たして今の監視体制で十分なんでしょうか」
横田崇氏
「陸上からの監視が主になっていて、海中や地下はぜい弱だと思います。今後さらに海域での監視体制が充実されていくことが望まれるところです。地震の発生間隔が100年から150年だとすると、次の地震の前後の変化をしっかり観測することが大事になりますから、指摘のような体制になるのが望まれます」
高島彩キャスター
「まだ改善の余地があるということで、そこに予算を出さなければということになりますよね。柳澤さんは『巨大地震注意』という今の段階どう受け止めていますか」
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏
「今回こういう情報が出たのは初めてですから、十分に国民に周知されていたのかどうか、今後に生かすべき点はどういうことなのか、しっかり検証して問題点を洗い出しておく必要があるんじゃないかなと思います」
高島彩キャスター
「そういう意味ではいかがでしょうか」
横田崇氏
「これまで周知が十分でないとか。認知度が低いということは言われていました。今回のこの情報が出たことで改めて皆さんがどう対応したのか、そういうことをきちっと検証していくと。そして次の改善に向けていくということが大切な事になるんだろうと思います」
高島彩キャスター
「そして改めて、気象庁が注意を呼びかけるこの1週間。1週間が過ぎたから大丈夫ということではないですよね。どのような気持ちで過ごせばいいでしょうか」
横田崇氏