鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループの秋田善祺元代表から、吉川貴盛元農相が2018年11月から19年8月にかけ、計500万円の賄賂を受け取ったとされる贈収賄事件。吉川氏は疑惑発覚後の20年12月に衆院議員を辞職。22年には収賄罪で懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金500万円とする東京地裁判決が確定した。
西川公也氏(2017年撮影)
◆「賄賂に当たる可能性高い」とし収支報告書へ記載せず
記録によると、西川氏はアキタフーズの秋田善祺(よしき)元代表から、14年9月から約5カ月の農相在任期間を含む20年7月まで「毎年盆暮れに100万円程度の現金を手渡された」と明かした。農相就任時や自民党総裁選の前には「100万円より多い額」を受けたとしている。17~20年の内閣官房参与当時は「合計500万円程度の現金を受け取った」という。
これらの金について西川氏は「有権者の冠婚葬祭の祝儀や香典代、弔電代、私設秘書や運転手の人件費、会食の費用、外遊の際に外国要人に手渡すお土産代などに使った」と説明。その上で「賄賂に当たる可能性が高い」ため収支報告書に記載しなかったとし、違法性を事実上認めていた。
◆公訴時効にかかるとして立件は見送られた
現金を受け取る際には「書面や口頭で多種多様な要望を受けた」とし、趣旨について「私にアキタフーズを含む養鶏業界に有利になることをしてもらいたい、要望を実現してもらいたいという気持ちからと分かっていた」と述べていた。
本紙は西川氏の事務所に電話や文書でコメントを求めたが、1日夕の期限までに回答はなかった。
西川氏は鶏卵汚職を巡る疑惑が浮上し、20年末に「一身上の都合」として内閣官房参与を辞任。しかし「私に疑惑はない」としていた。東京地検特捜部は21年、農相時代の現金授受は公訴時効にかかるなどとして、西川氏の立件を見送った。
◇ ◇
西川氏の「政治と金」に絡む疑惑はこれだけではない。
自民党TPP対策委員長で農相だった西川氏は環太平洋連携協定(TPP)交渉が大詰めに入った15年2月、国の補助金交付先側からの政治献金問題が浮上。違法性を否定したが、TPP交渉への影響も考慮し、農相を辞任している。16年6月には、日本養鶏協会関係者からの現金受領も発覚。当時、事務所は受領を認めつつ、返金したと説明していた。