鶏卵汚職事件、西川公也元農相も1500万円受領 本紙請求の刑事確定訴訟記録で判明(2024年8月2日『東京新聞』)

 
 鶏卵生産大手「アキタフーズ」から現金を受け取ったとして、2022年に吉川貴盛農林水産相収賄罪が確定した鶏卵汚職事件で、吉川氏の約5年前に農相を務めた、栃木2区選出で元自民党衆院議員の西川公也氏(81)が、21年の東京地検特捜部の聴取に、同社から14~20年の6年間に計1500万円を受け取ったと供述していたことが、本紙の請求で東京地検が開示した刑事確定訴訟記録で分かった。(小沢慧一)

 鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループの秋田善祺元代表から、吉川貴盛元農相が2018年11月から19年8月にかけ、計500万円の賄賂を受け取ったとされる贈収賄事件。吉川氏は疑惑発覚後の20年12月に衆院議員を辞職。22年には収賄罪で懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金500万円とする東京地裁判決が確定した。

西川公也氏(2017年撮影)

西川公也氏(2017年撮影)

◆「賄賂に当たる可能性高い」とし収支報告書へ記載せず

 記録によると、西川氏はアキタフーズの秋田善祺(よしき)元代表から、14年9月から約5カ月の農相在任期間を含む20年7月まで「毎年盆暮れに100万円程度の現金を手渡された」と明かした。農相就任時や自民党総裁選の前には「100万円より多い額」を受けたとしている。17~20年の内閣官房参与当時は「合計500万円程度の現金を受け取った」という。
 これらの金について西川氏は「有権者の冠婚葬祭の祝儀や香典代、弔電代、私設秘書や運転手の人件費、会食の費用、外遊の際に外国要人に手渡すお土産代などに使った」と説明。その上で「賄賂に当たる可能性が高い」ため収支報告書に記載しなかったとし、違法性を事実上認めていた。

◆公訴時効にかかるとして立件は見送られた

 現金を受け取る際には「書面や口頭で多種多様な要望を受けた」とし、趣旨について「私にアキタフーズを含む養鶏業界に有利になることをしてもらいたい、要望を実現してもらいたいという気持ちからと分かっていた」と述べていた。
 本紙は西川氏の事務所に電話や文書でコメントを求めたが、1日夕の期限までに回答はなかった。
 西川氏は鶏卵汚職を巡る疑惑が浮上し、20年末に「一身上の都合」として内閣官房参与を辞任。しかし「私に疑惑はない」としていた。東京地検特捜部は21年、農相時代の現金授受は公訴時効にかかるなどとして、西川氏の立件を見送った。
 ◇  ◇
 西川氏の「政治と金」に絡む疑惑はこれだけではない。
 自民党TPP対策委員長で農相だった西川氏は環太平洋連携協定(TPP)交渉が大詰めに入った15年2月、国の補助金交付先側からの政治献金問題が浮上。違法性を否定したが、TPP交渉への影響も考慮し、農相を辞任している。16年6月には、日本養鶏協会関係者からの現金受領も発覚。当時、事務所は受領を認めつつ、返金したと説明していた。
 また、養鶏汚職事件発覚のきっかけとなった河井克行元法相の公選法違反事件に絡む、20年のアキタフーズへの家宅捜索の前日には、西川氏や元農水官僚らが秋田氏の豪華クルーザーで接待を受けていたことが判明している。
 こうした背景を抱えながら、西川氏は23年11月、皇居で天皇陛下から旭日大綬章の勲章を授与され、受章者を代表し「一層精進する決意です」とあいさつしていた。