旧統一教会「献金の返還求めず」念書は無効 最高裁初判断(2024年7月11日『日本経済新聞』)

キャプチャ
統一教会献金勧誘について最高裁が判断したのは初めて
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側の違法な勧誘で献金被害に遭ったとして、元信者の遺族が教団側に約6500万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は11日、元信者が署名押印した「返金や賠償を求めない」との念書を「無効」と判断した。
 教団の献金勧誘を巡る最高裁の判断は初めてで、元信者らの救済につながる司法判断といえる。同様の念書を交わしたケースは多数あるとされ、教団に対して被害回復を求める訴訟が増える可能性がある。
 同小法廷は念書を有効と認めて原告側敗訴とした二審・東京高裁判決を破棄し、献金勧誘の違法性を判断するため審理を同高裁に差し戻した。
 一、二審判決によると、原告女性の母親は教団の信者だった2005〜10年ごろ、寝たきりだった夫の財産など計約1億円を献金した。15年に「献金は自身の意思で行ったもので返金や賠償を求めない」とした教団宛ての念書に署名押印。その半年後に認知症と診断され、21年に亡くなった。
 上告審では①念書の有効性②信者による献金勧誘の違法性――の2点が争われた。

 原告側は念書作成時に母親は認知症だった可能性が高く、署名押印を拒否できない心理状況だったとして無効と訴えた。勧誘も「組織的に恐怖をあおって多額の金銭を寄付させた」として違法だと主張した。
 教団側は念書は母親が自らの意思で署名押印したもので有効だと反論。勧誘の違法性を裏付ける証拠は一切ないとして上告棄却を求めた。
 21年の一審・東京地裁判決は念書は有効で教団に対する訴訟は起こせないと判断。信者の献金勧誘も違法とまではいえないとして女性側の請求を全面的に退けた。22年の二審判決も支持した。
 教団を巡っては、政府が23年10月、宗教法人法に基づき、東京地裁に教団の解散命令を請求した。現在も非公開で審理が続いている。

統一教会 “教団に返金求めない”念書は無効 最高裁が初判断(2024年7月11日『NHKニュース』)
 
キャプチャ
統一教会の元信者や家族が教団に支払った献金を返すよう求めた裁判で、最高裁判所は11日、高齢の元信者が書いた「教団に返金を求めない」という念書は無効だとする判断を示しました。その上で、献金を勧誘した行為の違法性や教団の責任について、東京高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
献金勧誘の違法性や教団の責任など 高裁で審理やり直し命じる
キャプチャ2
原告の女性は、長野県に住んでいた元信者の母親が違法な勧誘で高額な献金などをさせられたとして、母親とともに教団と信者に賠償を求める裁判を起こしました。
裁判を起こす2年前の2015年、母親が86歳の時に「教団に返金を求めない」などとする念書を書き、動画にも収められていたことから、1審と2審は訴えを退けました。
母親は裁判中に亡くなり、娘が上告していました。
キャプチャ3
11日の判決で最高裁判所第1小法廷の堺徹裁判長は、「母親は半年後には認知症と診断され、合理的な判断をすることが困難な状態だった。信者らは念書の締結を終始主導し、判断が難しい母親の状態を利用して一方的に大きな不利益を与えた。念書は無効だ」と指摘しました。
また、母親の献金が1億円を超えているなどの状況について、「異例と評価でき、母親の生活に無視しがたい影響を及ぼすものだ」と述べました。
一方、献金の勧誘が違法かどうかについては、「寄付者の属性や家庭環境、教団との関わり方などについて、多角的な観点から検討することが求められる」などとして、東京高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。
統一教会献金をめぐる裁判で最高裁が判決を出したのは初めてで、同様の裁判に影響する可能性があります。
統一教会 “主張の正しさ 差し戻し審理でも主張する”
最高裁判所の判決について、旧統一教会=世界平和統一家庭連合は、「これまでの地裁、高裁が事実と証拠に基づき出されてきた判決が、差し戻しという結果になったことは残念でなりません。今後も主張の正しさを差し戻しの審理でも主張していく」とコメントしています。

献金勧誘、旧統一教会の勝訴破棄 「賠償求めず」念書争点、最高裁(2024年7月11日『共同通信』)
 
キャプチャ
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の本部が入るビル=2023年1月、東京都渋谷区
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側の違法な勧誘で献金被害に遭ったとして、元信者の女性の遺族が教団側に約6500万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は11日、教団側勝訴とした二審東京高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。女性が署名した「教団に賠償などを求めない」との念書の有効性や、献金勧誘の違法性が争点だった。
 念書と同様の書面を教団に提出するケースは多いとみられる。教団を巡っては解散命令請求の裁判も東京地裁で進んでいる。
 一、二審判決によると、親族らに誘われ入信した女性は、長野県に住んでいた2005~10年ごろ、寝たきりだった夫の財産など1億円以上を献金した。15年11月、献金は自身の意思で、返還請求などは一切行わないとする念書に公証役場で署名押印し、教団に提出。女性は念書作成の約半年後に認知症と診断され、21年に亡くなった。 

うつろな表情の母が「はい」くり返す57秒の動画 最高裁判断へ(2024年7月11日『毎日新聞』)
 
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)はしばしば献金した信者に対し、「返金を一切求めない」と書かれた念書や合意書を用意し、署名を求めてきた。
 そうした文書は、時に返金を求めたい信者や家族にとって、大きな壁となってきた。
 だが今、司法の場で文書の有効性が問われている。
 以下の関連記事があります。記事の最後に動画があります。
 「献金返還求めない」司法が”正義に反する”と断じた覚えのない合意
 「書きたくなかった」元信者のもとへ異例の「念書」返却 背景に何が
 小柄な母は、カメラを向けられ、白いソファに身を沈めていた。
 身を硬くし、無表情な顔に、かつての明るい面影はない。
 母が映るこの動画は2015年11月、長野県にある世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教会施設で教会側が撮影した。
 当時86歳だった母の前のテーブルに置かれた紙には、こう印字されていた。
 「寄付ないし献金は、私が自由意思で行った」
 教団が用意した「念書」だった。
 母やその娘である自分が、後々にわたって返金を求めないための対策だったと、神奈川県に住む60代の女性は思っている。
 母はこの紙に署名をして動画を撮られた半年後、アルツハイマー認知症と診断された。
 母は10年以上にわたって億単位の献金をささげていた。
 この年の8月、母は初めてそれを女性に明かし、「もうやめたい」とも言った。
 そして、教会の幹部たちは女性が母に返金手続きをさせる可能性に気付いた。
 11月、母は信者に公証役場に連れて行かれ、念書に名を書いた。
 教会施設に場を変えて撮影されたのが、この動画だった。