芯の強さを感じさせる女優だ
一本の映画が物議を醸している。現在公開中の映画「先生の白い嘘」(三木康一郎監督)だ。男女の性の不条理に切り込んだ鳥飼茜さんの漫画の実写化作品だが、インタビュー記事で、撮影段階でのインティマシー・コーディネーターの導入を拒絶したと明かした三木監督の発言が波紋を広げているのだ。
三木監督は公開直前、インタビュー記事で、主演の奈緒(29)側からインティマシー・コーディネーターを要請されたが、拒絶したことを明かしていた。このため、ネット上で批判の声が上がっていた。
インティマシー・コーディネーターとは、性加害描写などの性的表現を伴う撮影の際、制作者と出演俳優との間に立って身体的、精神的な調整を行う専門家のことだ。
このため5日に行われた舞台あいさつでは、三木監督ら制作側が謝罪する事態に。さらに奈緒ら出演者もそれぞれの思いを語ることになった。
「撮影は2年前に行われたといいます。当時は映画監督による性加害問題が発覚し、ようやく俳優側の身体的、精神的ケアの必要性が叫ばれるようになったころで、インティマシー・コーディネーターは存在していましたが、制作側の理解が深まっていなかった。とはいえ、本作のような題材を扱うには制作側が勉強不足だったと言わざるを得ません。それはさしおいて、このご時世に要請を拒絶したことを無自覚に話してしまうこと自体が、この2年間で性加害問題への意識がアップデートされてないことをさらしてしまっている」と映画関係者。
そんな中、主演の奈緒の立ち回りが注目されている。舞台あいさつでは、気丈に「私は大丈夫です」と語った上で、現場では監督とも対等の立場で話し合い、それでも現場に対して不十分だと思う部分もあったとも包み隠さず明かしたのだ。
そして「自分の誠意を脅かすようなことがあれば、まずは自分の気持ちをぜひ守ってください。その誠意を脅かすような言葉にはしっかりとノーと自信を持って言ってください。きっとそれが自分を一番守ることにつながるのかなと思います」とメッセージを送った。
「奈緒さんは現場でも誠実な人柄で知られています。気遣いができ、礼儀も正しい。ふわふわした雰囲気を持っていますが、実際はしっかり芯の強い女優です。だからこそ、舞台あいさつでも勇気をもって語ることができる。今回の件は決して軽く見過ごしてはいけないが、奈緒さんの人間としての強さが見えたのではないでしょうか」と先の映画関係者は話す。