「愛子さまと佳子さまの結婚」を1人で邪魔している大物政治家の名前とは?(2024年7月6日『ダイヤモンド・オンライン』)

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佳子さま Photo:SANKEI
● 皇位継承問題の決着は 立憲民主党の反対で先送りに
 小泉内閣の時、女系天皇を可能にする案が検討されたが、悠仁さまの誕生で沙汰やみになった。とはいえ、公務の担い手は減っているし、悠仁さまに男子がいなかったときの備えも必要なので、各党間の意見集約が進み、この通常国会で合意しそうだった。ところが、立憲民主党の頑強な反対で先送りになった。
 「なにも急ぐことではない」という問題ではない。「女性皇族が単独で結婚後も皇族身分を保持すること(単独残留)」と「旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族とすること(旧皇族養子)」は、いずれも焦眉(しょうび)の急なのだ。
 「単独残留」が可能になれば、佳子さまや愛子さまの結婚相手の条件は根本的に変わるため、見通しが立たないと縁談は進められない。
 「旧皇族養子」も、養子を取る側の常陸宮殿下がご高齢なだけに、早期の決着が望ましい。
 週刊誌「女性自身」は、『佳子さまら女性皇族をますます「結婚できない」状況に…天皇陛下も“ご苦言”呈された「岸田首相の大失態」』という記事を書いている。
 もちろん、皇位継承という安倍元首相から引き継いだ宿題を仕上げると言いながら、腰砕けに終わった岸田首相にも責任の一端はある。
 しかし、国会決議で設けられた安定的な皇位継承策を議論する有識者会議(座長・清家篤慶応義塾長)の報告に基づく、先述の二つの提案(単独残留と旧皇族養子)に対し、自民・公明だけでなく、維新や国民までもが賛成に回ったのに、立憲民主党がかたくなに自説に拘泥したから頓挫したのだ。
 そして、立憲民主党にあって「安定的な皇位継承に関する検討委員会」の委員長として一人で成案を妨害したと批判されるのが野田佳彦元首相である。
 「単独残留」を否定し、配偶者や子どもも皇族にしろと要求し、「旧皇族養子」は、希望者がいるか具体的に確認してから制度を議論しろ、憲法上の疑義があると言い張った。
 野田氏は首相時代、皇族女性が結婚したのち「女性宮家」を創設して配偶者や子も皇族とすることを画策した。だが、小室圭氏の出現により、皇族女子と国民が皇族にふさわしくないと感じる男性との結婚は杞憂(きゆう)でないことを立証され、支持を失った。
 小室氏のケースは極端だったが、いずれにせよ、民間出身者が男性皇族になることのハードルが高くなり、佳子さまや愛子さまの結婚相手を見つけるのは困難になってしまう。
 「単独残留」を否定する人たちは、夫婦や親子で法的な立場が違うのは異常だと主張する。だが、国際結婚した夫婦や親子であれば、国籍すら違ったままであることも多い。それと比べればなんということではない。
 また、有識者会議の案は佳子さまや愛子さまの子孫が皇位に就くことの可能性を将来ともに排除しているわけでもない。悠仁さまに男子がいなかった場合、男系も女系も道を残しており、つまり、延長戦なのだ。また、佳子さまや愛子さま一人だけの家を、女性宮家と呼ぶことも可能だ。
 女性皇族の配偶者の立場は、首相夫人と似たようなものになる。公人ではないが、公務にも参加する。また、社会的に好感をもたれていない人物や、利権に絡む企業の経営者などが関わるような、常識的に首相夫人に好ましくない仕事であれば、外遊や公の場所に首相夫人として同行させないようにする。特に政治家はそうだが、これは女性皇族の夫も同じだ。
● 「旧皇族養子」を否定する 野田氏の意図
 「旧皇族養子」に対して、立憲民主党は「現実的に養子の対象となり得る方がおられるのか、その方の意思とともに、現実に確認した上で、制度設計の議論に移らねばならない」というが、無理難題だ。
 旧皇族男子に対し、「養子になってくれと言われたら受けますか」と、成立もしていない制度を前提に質問されても、「受けます」とは言えないだろう。
 私の知る限り、養子候補となる悠仁さま世代の旧皇族男系子孫は10人ほどいる。旧宮家の人々の多くは、「自分たちから希望しないが、正式な打診があれば、お役に立てるならお受けするのが自分たちの立場だ」と考えている。
 実際には、制度ができたら、宮内庁で候補を調査し、政府にも相談し、皇族方のご意向を聞いて、打診するのではないか。年齢は、打診するのは中高校生以上、養子縁組の成立は大学生くらいがいい。特別の人生を歩むのだから、本人の意思確認をしたほうがいい。
 また、民間人を皇族にするのは、憲法上問題というが、その考え方では、皇統断絶のリスクが大きい。佳子さまと愛子さまの女系子孫に皇位継承を認めたとしても、悠仁さまを含めてたった3人のいとこの子孫だけに皇位継承権を限定したら、近い将来、誰もいなくなる可能性がある。民間人から皇族に戻れないとしたら、いずれ皇室は店じまいになるしかあるまい。
 野田氏の意図は、「単独残留」ではなく配偶者や子も皇族にする「女性宮家」を先行させて実現し、「旧皇族養子」は結論が出ないまま沙汰やみにしてしまうということだろう。
 しかし、「単独残留」と「旧皇族養子」という二つの案を並列させたのは、男系派と女系派の妥協の結果である。男系派は、女系継承に道を開くことになりかねないから、結婚後の佳子さまや愛子さまが皇族として残留することを本当は好まない。
 それでも、「旧皇族からの養子案が実現するなら」とワンセットでのんだ。
 ところが野田氏は、自分の意図が100点満点で受け入れられなかったら制度改正が流れてもいいと開き直っている。これは政治家としていかがなものか。
● 「愛子天皇」という蜃気楼を 見せて議論を遅らせる人たち
 なお、前述の週刊誌「女性自身」の記事で与野党間の合意の遅れを批判している神道学者は、別のメディアにおいて、皇室継承問題をこじらせているのは、「天皇陛下から秋篠宮殿下、さらに悠仁親王殿下へという今の皇位継承順序が“変更されない”範囲内で、事態の打開策を探ろうとしているからだ」と発言。まるで「愛子天皇」を実現すべきだと言いたいようだ。
 しかし、野田氏ら立憲民主党関係者も、悠仁さまの継承は否定していない。すでに書いたように、生前退位のための法律で、わざわざ秋篠宮殿下を皇嗣殿下として皇太子と同様にすると決め、立皇嗣礼までしたのである。
 にもかかわらず、一部の専門家と称する人たちは、皇太子は空席だとかデマを流したり、あたかも国会で議論されているのが、愛子天皇の是非だと印象操作をして、一般国民に「蜃気楼(しんきろう)」を見せてあおり、議論の進展を遅らせている。
 付け加えると、ヨーロッパにおいて女王や女系継承が拡大しているのは事実だが、すでに生まれている王族の順位は変えないのが常識だ。したがって、日本においても、女系を認めたとしても、悠仁さまより後の話でないと、国際的にも非常識だ。
 悠仁さまより愛子さまのほうが天皇にふさわしいという人もいる。だが、悠仁さまの資質については、学業、健康、帝王学としての経験などにおいて、何の問題も生じていない。大学進学後は、在学中にでも早く留学をされたり、両親だけでなく上皇陛下や天皇陛下から直接に薫陶を受けられたりすることだろう。
 一方、愛子さまは、大学もわずかしか通学されていなかった。「成年の儀」も遅れた上、一連の行事を未達成のまま終わった。20歳前からするべき本格的な単独公務をまだ開始されていない。というように、これまでの皇族の常識にとらわれず自由に個性を発揮されている。
 両陛下には、時間に制約されずに物事に取り組むという愛子さまの長所を伸ばしたいというお考えなのだろうが、将来の天皇となる可能性を少しでも念頭に置いておられるならありえないだろう。天皇というのは、何ごとも好き嫌いなく、決められたときに決められたことを要求される仕事だからだ。
 (評論家 八幡和郎)