鹿児島県警情報漏えい 本部長が会見、隠蔽疑惑を改めて否定 「被告の退職後から捜査指揮した」 他方、捜査中断あった事実も 守秘義務違反で起訴の前生活安全部長は保釈(2024年6月22日『南日本新聞』)

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鹿児島県警前生活安全部長が起訴され謝罪する野川明輝本部長=21日午後3時ごろ、鹿児島市の県警本部
 鹿児島地検は21日、職務上知り得た秘密を退職後に漏らしたとして、前鹿児島県警生活安全部長の団体職員の男(60)を国家公務員法守秘義務)違反の罪で鹿児島地裁に起訴した。被告の「野川明輝本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽(いんぺい)しようとした」との主張に対し、野川本部長は同日の記者会見で改めて否定した上で「客観的事実は裁判で明らかになるだろう。(自身への)疑念はおのずと晴れるのではないか」と述べた。
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記者会見で質問に答える野川明輝本部長(左から3人目)=21日午後3時50分ごろ、鹿児島市の県警本部
 漏えいしたとされる情報には、前刑事部長の名誉を害する内容や、事件の公表を望んでいない女性の個人情報が記されており、「公益通報には当たらない」と判断したと説明した。
 「隠蔽」の疑惑が浮上した枕崎署員の盗撮事件について「捜査は適正だった」と強調。昨年12月22日に野川本部長が前首席監察官から「容疑者は署員の可能性がある」と口頭で報告を受けたものの証拠が乏しく、引き続き署で捜査するよう指示したと説明した。この時点で、被告にも情報を共有していた。しかし、野川本部長が指揮を執ったのは被告の退職後の今年5月10日からだったと明らかにした。
 一方で、前首席監察官から前署長に野川本部長の指示内容を共有する中で「捜査は中止」との誤った認識が伝わり、2日ほど捜査が中断した事実も判明。署は今年3月19日に「容疑者浮上報告書」を作成していたが、ただちに野川本部長に捜査指揮を伺っていなかったことも分かった。野川本部長は「早期に容疑者を摘発できた可能性はあり、反省している」と釈明した。
 同事件について、捜査状況のきめ細かな確認や指示がなかったことなどを理由として、野川本部長は6月21日付で警察庁から長官訓戒処分を受けた。前首席監察官も口頭厳重注意を受けた。
 県公安委員会は同日、「野川本部長が隠蔽を指示したと判断する事実は認められない」とする一方、「県警の組織運営に対する懸念が広まっていることは事実であり、早急に払拭するよう要望する」などとコメントした。
 被告が漏らしたとされる文書を巡っては「再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはない」などと書かれた「刑事企画課だより」もあった。県警は会見で警察庁から表現に問題があるなどと指摘を受けたため、内容を修正して再発行したと明らかにした。
 別の情報漏えい容疑事件で、福岡市のウェブメディアに家宅捜索した是非が問われている問題については「報道の自由は尊重した上で、事案の重大性や客観証拠などを踏まえて行った」と強調した。
 鹿児島地裁は21日、職務上知り得た秘密を退職後に漏らしたとして、国家公務員法守秘義務)違反の罪で起訴された、鹿児島県警前生活安全部長、団体職員の男(60)の保釈を認める決定をした。
 弁護人は、被告が起訴されたことについて「大変残念。主張した県警の隠蔽(いんぺい)行為については公判で真相が解明されることを願っている」とコメントした。
 起訴状などによると、被告は退職後の3月28日ごろ鹿児島市内で、2月14日付で自身の名義で作成された、警察官によるストーカー容疑事件の捜査経過や被害者の氏名などの個人情報が記された文書を基に、作成日と名義などの記載を除いた書面の写しを第三者に郵送し、4月3日ごろ受け取らせ、職務上知り得た秘密を漏らしたとされる。
 鹿児島地検は起訴した理由を「諸般の事情を総合的に考慮して、起訴するに相当な悪質性があると判断した」と説明。別の事件で福岡市のウェブメディアへ家宅捜索したことをきっかけに容疑が浮上したとされる経緯については「捜査内容に違法な点はないと判断している」としている。

女子トイレでスマホ盗撮80回 勤務中、捜査車両使った時も…起訴された巡査部長を懲戒停職3カ月、本人は依願退職 鹿児島県警(2024年6月21日『南日本新聞』)
 
 鹿児島県警は21日、トイレに侵入して女性を盗撮したなどとして、性的姿態撮影処罰法違反(撮影)などの罪で起訴された、枕崎署地域課巡査部長の男(32)を停職3カ月の懲戒処分にした。巡査部長は同日付で依願退職した。「被害者はもちろん、県民や組織など多くの方々に迷惑をかけて申し訳ない」と話しているという。
 複雑に絡み合う警官不祥事、真相はなお闇に包まれる 県警によると、巡査部長は2019年9月17日~23年12月23日の間に少なくとも計80回、女性用トイレに侵入して性的姿態を撮影した。枕崎署在任中は37回、うち9回は勤務中で捜査車両を使ったこともあった。23年7月20日には、業務以外の目的で、1人の被害女性の住所などの個人情報を不正に照会した。
 同事件を巡っては、国家公務員法守秘義務)違反容疑で起訴された前生活安全部長が、24年6月5日に鹿児島簡裁であった勾留理由開示手続きで「野川明輝本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとした」と主張した事件の一つだった。
 

盗撮警官の逮捕は認知5カ月後…漏えい文書に内部情報含まれ、隠しきれなかった? 鹿児島県警は真っ向否定。複雑に絡み合う警官不祥事、真相はなお闇に包まれる(2024年6月14日『南日本新聞』)
 
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鹿児島県警不祥事の集中調査などが行われた県議会総務警察委員会=11日午後、県議会同委員会室
 
 「野川明輝本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽(いんぺい)しようとした」。国家公務員法守秘義務)違反の疑いで逮捕、送検された前鹿児島県警部長の容疑者の男(60)が、県警トップを名指しで批判し注目を集めている。野川本部長は「隠蔽を意図した指示は一切ない」と否定し、双方の主張は真っ向から対立する。背景をひもとくと、相次ぐ県警不祥事が絡み合いながら一続きにつながる実態が浮かび上がる。
 容疑者は3月下旬まで、県警本部に五つある部の一つ「生活安全部」の部長を務めた。当時の階級は9段階のうち4番目に高い警視正。県警内に数人しかいない最高幹部だった。野川本部長の階級はさらに一つ上の警視長で、容疑者とは日常的に業務のやり取りがあったとみられる。