「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、6年前に急死した和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん(当時77歳)が全財産を市に寄付するとした「遺言書」について、有効だと判断した21日の和歌山地裁判決。記者会見した市の担当者は、「判決が出るまで長かった。遺言書は有効であると信じてきた。改めてほっとしている」と胸をなでおろした。
野崎さんは2018年5月に急性覚醒剤中毒で死亡。その後、「個人の全財産を田辺市にキフする」などと記された書面を関係者が保管していたことが判明。市は19年9月に受け取る方針を示した。これに対し、野崎さんの兄ら親族が無効だと訴えていた。
判決を受け、西貴弘総務部長は、遺産の具体的な使い道は全く決まっておらず、市民全体に関係する行政活動に使っていきたいとし、「市の財政状況は良好なため、すぐに使うことは考えていない。財政調整基金などへの積み立ても含めて対応を考えたい」と話した。
遺産は13億円以上とされているが、市契約課の宮野恭輔企画員は遺産の評価、鑑定に関し、「不動産の処分などが決定した段階で鑑定などの作業にかかりたい」とした。
真砂充敏市長は「遺言書が有効であるという本市の主張が認められたものと受け止めている。引き続き適正な対応に努めてまいりたい」と書面でコメントした。【大澤孝二】
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた会社経営者で資産家の野崎幸助さん(当時77歳)が残したとされる「遺言書」の効力が争われた訴訟の判決で、和歌山地裁は21日、「有効」と判断した。書面には少なくとも13億円に上る全財産を地元の和歌山県田辺市に寄付すると記されていた。高橋綾子裁判長は「本人の筆跡とみて相違ない」と判断した。
判決などによると、野崎さんは2018年5月に急性覚醒剤中毒で亡くなった。書面には「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」と書かれ、日付や署名、押印もあった。遺言書の要件を満たすとした家庭裁判所の判断を受け、市は19年9月に遺産を受け取ると発表。これに対し、野崎さんの兄ら親族4人が無効だと訴えていた。
野崎幸助さんの死後に見つかった遺言書とされる書面(画像の一部を加工しています)
判決はまず書面の筆跡を検討。他のメモなどと特徴が似ており、野崎さん固有のものと認めた鑑定結果について「不合理な点は認められない」と指摘。野崎さんが好んだ赤のペンで書かれており、「自筆を裏付ける」と判断した。生前の野崎さんが田辺市に1000万円以上を寄付し、これを続ける意向を示していたことも踏まえ、「遺産全てを遺贈するという内容と矛盾しない」と結論付けた。
須藤早貴被告
和歌山県田辺市で2018年、「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家、野崎幸助さん(当時77歳)が急死した事件で、和歌山地検は19日、覚醒剤を飲ませて殺害したとして、元妻の須藤早貴容疑者(25)を殺人と覚醒剤取締法違反(使用)の両罪で起訴した。目撃証言などの直接証拠がない中、地検はスマートフォンの検索履歴など、状況証拠の積み重ねで立証できると判断した模様だ。