マイナ保険証導入 約4割反対 情報漏えいに不安の声多数 <みなぶんアンケート>(2024年6月13日『北海道新聞』)

 政府は2024年12月2日に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに機能を一本化した「マイナ保険証」に移行する方針です。北海道新聞「みなぶん特報班」が公式LINEでつながっている「みなぶん通信員」(フォロワー)にマイナ保険証について意見を聞いたところ、「現行の保険証と併用できるようにしてほしい」が最多の40.1%に上り、次いで「反対」が38%でした。「賛成」は21.9%にとどまり、健康保険証の廃止に否定的な意見が多数を占めました。(藤田夏子)
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 アンケートは5月15日~19日に実施し、10代から80代の計297人から回答を得ました(みなぶんアンケートは、通信員から多様な意見を聞く目的で行っており、無作為抽出で行う世論調査とは異なります)。
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■賛成派 2022年11月実施より5.8ポイント低く
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 マイナ保険証に関するみなぶんアンケートは、22年11月にも実施しました。
 前回と今回の回答を比較すると、賛成は5.8ポイント下がり、反対が3.5ポイント、併用が2.4ポイントずつ上がりました。
 マイナカードを「持っている」と答えた人は75.4%で、前回より10.9ポイント上がりました。「持っていないし、取得するつもりもない」は21.9%、「持っていないが、取得しようと思っている」は1.7%、「わからない」は1%でした。
 また「マイナンバーカードと健康保険証をひも付けているか」と聞いたところ、「ひも付けている」が最多の52.5%でした。「ひも付けていないし、ひも付けるつもりもない」は37.4%、「わからない」は5.4%、健康保険証廃止までの「半年以内にひも付けようと思っている」は4.7%でした。
■岸田首相 マイナ保険証は「医療DXの基盤」
 マイナ保険証は、2021年10月から本格的な運用が始まりました。政府は普及のため、23年9月末まで登録者に「マイナポイント」を付与しました。
 厚生労働省によると、マイナ保険証の登録数は3月末時点で約7207万件。岸田文雄首相は5月、マイナ保険証を医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤と位置づけ「12月の移行に向け、万全の準備を進めたい」と発言しています。
■賛成でも、懸念の声
 マイナ保険証に賛成と答えた人からは「アナログな手続きによる手間と時間を無くせる」(江別市、女性、64歳)、「(現行の保険証は)仕事や家族の都合などで切り替えがあった時、新しい保険証が手元に届くまで時間がかかる」(釧路管内、公務員、女性、30代)との声が寄せられました。
 札幌市豊平区の男性会社員(29)は「保険証の適正利用のためにも一本化に賛成」と回答。一方で「導入・切り替えについての広報・利用促進が不十分だと感じる」とも指摘しました。男性のように一本化に賛成しつつ、政府の周知、説明不足を訴える声は複数ありました。
 ◆管理しないといけないカードが1枚減ることには賛成だが、手続きの事などがよく分からない(函館市、主婦、女性、34歳)
 ◆国民にもっとメリットを打ち出すべきだ。国が言わないのなら、専門家がメディアを通してわかりやすく説明して欲しい(札幌市北区、保育士、女性、61歳)
 ◆一応ひも付けはしたが、「デジタル化」のメリットがまだ分かっていない。周知がさらに必要(札幌市厚別区年金生活者、男性、72歳)
■情報漏えいを心配 併用、反対の両派から多く
 厚生労働省によると、マイナ保険証で他人の情報を誤登録した事例はこれまでに約9200件確認されています。併用もしくは反対と回答した人からは個人情報の漏えいを不安視する声が複数寄せられました。
 ◆健康保険証は他の身分証明書で代用できないため、システムトラブルや行政側による登録ミスのリスクを考えるとマイナンバーカードと一体化するべきではないと思う(札幌市北区、専門学校生、男性、18歳)
 ◆ポイントにつられたが、個人情報保護上の懸念がある。病院側のコストも大きそう。もっと議論をつくすべきだ(札幌市北区、学生、男性、23歳)
 ◆導入には賛成だが、情報流出などのリスク管理が心配(上川管内南富良野町、会社員、女性、39歳)
 ◆システムエラーなど、人為的ミスで他人の情報と間違われることが心配(北見市、無職、女性、72歳)
 こうした心配の声のほか「何もかもがマイナンバーカードに集約されたとき、カードを一枚落としたときのリスクが増える」(札幌市手稲区、大学生、女性、23歳)、「カードをいつも財布に入れておくのは抵抗を感じる」(旭川市、パート、女性、45歳)と重要なカードを持ち歩くことへの不安も寄せられました。
■医療現場や通院時の意見も
 元病院受付窓口という札幌市南区の主婦(40)は「機械の操作や利用者の応対に時間がかかり、本来の業務が進まない」ため反対と回答。マイナ保険証を利用する際の不満の声もありました。
 ◆マイナ保険証を持ってきたのに、機械がカードを読み込めず、保険証無しの扱いになるなど現場の混乱がひどい。現行の保険証と並行して使えるようにした方がいい(札幌市北区、自営業、女性、38歳)
 ◆暗証番号を失念していたり、カードをスタッフに丸投げしたりする人も多い。人手不足の上、マンパワーをとられてしまう(札幌市中央区、病院窓口、女性、60歳)
 ◆全ての医療機関でマイナ保険証を利用できるわけではなく、利便性を感じられない。それなのに保険証を今年中に廃止するなど考えられない(北広島市、パート、女性、62歳)
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