川を流される男児、橋に立ち尽くす通行人…男性は服を脱ぎ捨て迷わず飛び込んだ「死なんでよかった」(2024年6月1日『読売新聞』)

 川で溺れていた小学3年生の男児(8)を救出したとして、富山県警射水署は射水市の専門学校生の男性(18)に感謝状を贈った。(深井陽香) 
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  5月13日午後5時頃、男性は富山市内の専門学校からの帰宅途中、小杉駅の南約300メートルの下条(げじょう)川の真ん中を男児が溺れながら流されているのを発見した。近くで遊んでいて誤って転落したらしい。
 「誰も助けに行かないし、苦しそうな男の子を何とか助けたかった」
 川幅は約30メートル。そばの橋には通行人がいたが、なすすべもなく立ち尽くしていた。雨上がりで周辺の当時の気温は15度と肌寒い日だった。しかし、迷っている暇はない。服を脱ぎ捨て川に飛び込んだ。
 川底は深く足が届かず焦った。なんとか男児に泳ぎ着き、いったん体をつかんだものの、流れにのまれて、また引き離された。2人は流されながら無我夢中で岸を目指した。運良く男性が川の真ん中に足がつく場所を発見、そこで男児を確保した。
 胸まで水につかったまま、冷たさに耐えながら男児を抱きかかえ、通行人が呼んでくれた消防隊の救助を待った。
 「慌てないで、息をしよう」。声をかけ続けた。男児は次第に落ち着いていったという。
 救助を待っていた時間は5分から10分程度だったが、「とても長かった。死なんでよかった」。自身も低体温症で病院で手当てを受けることになった救出劇だった。射水署によると、その後、男児も回復し、元気に登校しているという。
 男性は高校時代のサッカー部のコーチから言われた「人のためにやれることをやれ」が信条。人助けのため、警察官になりたいと勉強を続けている。
 24日の表彰式で射水署の浅野健一署長は「勇敢な行動だ。何よりとっさに行動できたのがすごい。これからも頑張ってほしい」と激励した。
 男性は「感謝されてうれしかった。これからも人を助けることを続けていきたい」と語った。