党内で“総理の器でない”の声も」 静岡県知事選の応援で失言の上川外相の正念場(2024年5月25日『デイリー新潮』)

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“失言”か“切り取り”か
 世論調査でも「ポスト岸田」として必ずその名が挙がる上川陽子外相(71)。地元・静岡の県知事選を勝利に導けば、いよいよ「女性初の総理」も現実味を帯びる。だが、ここにきて自身の“失言”で批判の矢面に。正念場を迎えている。
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メルケル首相」を彷彿とさせる上川陽子外相
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 上川氏が今月18日、静岡県知事選の応援のために静岡市内で行った応援演説が物議を醸している。
 発端は共同通信が同日、配信した以下の記事だった。
上川陽子外相は18日、静岡県知事選の応援のため静岡市で演説し、自民党推薦候補の当選に向け「私たち女性がうまずして何が女性か」と述べた。新知事を誕生させる趣旨とみられるが、出産困難な人への配慮を欠くと指摘される可能性がある〉
 政治部デスクが言う。
共同通信は当初、〈産まずして〉と表記した見出しで記事を配信。上川氏が子供を産めない女性を直接、非難したかのような誤解を読者に生じさせた。その後、共同は〈うまずして〉に修正しましたが後の祭り。ネットを中心に、上川氏に批判が集中する事態になったのです」
「会場では拍手も起きていた」
 上川氏は翌日、
「女性パワーで未来を変えるという、私の真意と違う形で受け止められる可能性があるとの指摘を真摯に受け止める」
 と、発言を即座に撤回したのだが、自民党所属のさる静岡県議は次のように上川氏を擁護する。
「女性を集めて行った集会での発言なんですよね。捉え方の問題ですよ。配慮が足りなかったといえばそうかもしれませんが、会場では拍手も起きて、不適切な発言だとは捉えられていなかったと聞きました。聴衆を感動させたいという思いがあって、ああいう表現になったのでは」
 一方で、前出の政治部デスクは、
自民党が支持基盤とする保守層からは、総理を目指すなら発言を安易に引っ込めるべきではなかったという声も上がっています」
 と、総理候補としての胆力が試される場面だったと指摘するのである。
県知事選は接戦で…
 もっとも、上川氏が火消しに躍起になったのには事情がある。
静岡県知事選は当初、野党が推薦する鈴木康友浜松市長(66)が、自民党推薦の大村慎一元静岡県副知事(60)を15ポイントほど引き離していました。しかし、最新の情勢調査では10ポイント以内までその差が縮まっています。自民党推薦の候補者が知事選で勝利する可能性が出てきているのです。上川氏は自身の発言で、大村候補の足を引っ張りたくないと考えたのでしょう」(前出・政治部デスク)
 この点、政治ジャーナリストの青山和弘氏は、
「上川さんは演説が得意ではなくて、これまで誰かの応援演説に呼ばれることはほとんどありませんでした。次の自民党総裁は“選挙で勝てる顔に”というのは衆目の一致するところ。大村候補の勝利に貢献できるかどうかは、彼女自身の評価にも多大な影響を与えることになります」
“総理の器ではない”の声も
 青山氏は、「メディアに切り取られるような不用意な発言は避けるべきだった」とも指摘して、こう続ける。
麻生太郎副総裁はいまだに、岸田文雄総理続投で道筋ができるなら基本的に構わないと考えているようです。一方、上川さんは麻生副総裁に推される以外に、総理になる展望はありません。また、彼女については“総理の器ではない”との声も党内から上がり始めている。そうした声をかき消すためにも、静岡県知事選で結果を出すことが求められています」
 26日の投開票日が、彼女の未来を占う運命の一日となりそうなのだ。
週刊新潮」2024年5月30日号 掲載