■ SPたちが囲んだ決起集会
【写真】「記憶にございます」記憶に残る去り際を見せた元衆院議員も静岡ゆかり
各メディアの情勢調査で激戦が報じられている2氏にフォーカスし、両陣営の動きを紹介したい。
だが、注目を集めたのは、前日18日の演説会で不適切発言をした上川氏がどのように対応するかということだった。
上川氏の登場で、身辺警護をするSPが数多く取り囲んだ。上川氏の周囲だけでなく、会場のいたるところに警備に当たる警察官が配置された。
まるで、上川氏を中心とした厳戒下での決起集会と言ってもおかしくなかった。
■ 「女性は産む機械」発言も静岡ゆかりの人物だった
上川氏は18日、静岡市内の演説会で、「(自民系知事を)わたしたち女性がうまずして何が女性でしょうか」と発言した。
女性たちの力で自民系知事の誕生を後押ししてほしい――。
自らの支持者にそう訴える中で「出産の苦しみ」をたとえに使ったに過ぎないわけだが、共同通信が『うまずして何が女性か』の見出しで記事を配信。本文には「子どもをうまない女性は女性ではないと受け取られかねない不適切な発言だ」という野党幹部のコメントも盛り込まれていた。静岡新聞、中日新聞がそのまま記事を掲載した。
総決起集会を終えたあと、報道陣の取材に対して、上川氏は「真意と違う」などと発言そのものを撤回した。
■ 不運が続く自民陣営
最後の選挙サンデーには、党大物や人気弁士らの静岡入りがあるのが通例だが、陣営はすべて断った。そして、首相候補に急浮上し、女性外相として世界を飛び回る地元出身の上川氏一本に絞ったのだった。
それが結果的には、不適切発言の騒ぎで、上川氏が話題をさらう形になった。
静岡新聞の電話調査サンプルは1041人だから、どこまで正確な事実を伝えているのかわからない。実際のところ、鈴木氏と大村氏とががっぷり四つに組んだ戦いと見て間違いないだろう。新知事の座をどちらが手にするのかは、投開票日まで見通せない状況である。
■ 裏金、パパ活不倫…問題直撃
大村氏は、川勝氏が4月2日に知事職の辞意表明をしてから間髪入れずに出馬表明し、選挙活動に入った。
塩谷氏は党の離党勧告処分に対して再審請求を行ったが却下され、離党を余儀なくされた。
さらに、安倍派の裏金疑惑の際に「暴露発言」をした宮沢博行・元防衛副大臣がパパ活不倫問題で週刊誌報道されることになり、辞職表明した。24日に辞職が認められた宮沢氏は、磐田、掛川、袋井など静岡3区を選挙区としていた。
テレビ、新聞は2人の醜聞を繰り返し報道した。「静岡自民」にとって、イメージを悪化させる不運が続いている状況にある。
■ リニア問題、大村・鈴木両氏はどうする?
一方の鈴木氏は、大村氏から約1週間遅れ、出馬表明した。共産党を除く、連合静岡、立憲民主、国民民主など野党連合を結集した選挙戦を展開している。
また、鈴木氏と関係の深い鈴木修・スズキ自動車相談役を筆頭に浜松経済界が一丸となって押している。
ただ、その内容は全く違うようだ。
大村氏は、選挙戦スタートの第一声で、リニア問題を早期に解決させるために「5つの約束」を掲げた。
「流域の声を反映させる」「大井川の水と環境を守る」「国の関与を明確にする」「静岡県のメリットを引き出す」の4つの約束を掲げ、5つ目が「(その4つの約束に対して)1年以内に結果を出す」である。
1日も早いリニア問題の解決は、川勝氏に対抗してきた静岡自民の主張でもある。その方針を明確に掲げたわけだが、ここでも予想外の出来事が起きた。
今年2月頃から工事中のトンネル内に湧水が発生、現在も毎秒20リットルの湧水が出ている。その影響で、地域のため池や井戸で水位の低下が確認され、JR東海はトンネル掘削工事を一時中断し、対応に当たると説明した。
17日から工事を中断して、地質や地下水を確認する調査ボーリングを6月から開始することになった。
毎秒2トンは、瑞浪市の100倍にも当たる膨大な水量である。その影響について、2018年夏から6年近くも協議してきた。
川勝氏の退場とともに、13日に開かれた県地質構造・水資源専門部会はJR東海の主張を丸のみする方向を示した。しかし、今回の瑞浪市の問題を受けて、そんなに簡単に丸のみしてよいのかと問われるのは間違いない。
■ 大村氏「1年以内に結果」を保留、鈴木氏「まずちゃんと理解する」
リニア工事による湧水流出問題を受け、大村氏は「1年以内に結果を出す」という公約を保留にすると述べたという。
2月頃からリニアトンネル内の湧水発生で地域の地下水位の低下などが起きていたのに、JR東海からの連絡が遅れたことを問題にしたようだ。
選挙戦のスタートで思い切りよく「1年以内に結果を出す」と打ち出したが、その公約を選挙期間中に保留にするという結果になってしまった。
一方の鈴木氏は、リニア問題について、知事就任後にちゃんと理解した上でさまざまな対応に取り組むとしている。
ところが、岐阜県の古田肇知事はいまのところ、徹底した原因究明と必要な対策を早急に進めるよう求めるコメントを発表したに過ぎない。
この地域振興策が何よりも重要である。
それで、川勝氏はリニア問題を放り投げて辞めてしまったのである。
対する鈴木氏は、出馬会見で、「静岡県のメリット」として「ひかりの本数を現在の1時間に1本から3本にする」と具体的な数字を挙げていた。
あらゆる方角からの逆風に抗う自民陣営。選挙戦を制し、国政でも攻勢を強めたい野党陣営。静岡県知事選の結末は、選挙戦最終盤に入った現在までまったく見えてこない。
■静岡県知事選立候補者(届け出順)
横山 正文(よこやま まさふみ) 56 諸新 政治団体代表
森 大介(もり だいすけ) 55 共新 党県委員長
鈴木 康友(すずき やすとも) 66 無新 (元)浜松市長=立国
大村 慎一(おおむら しんいち) 60 無新 (元)副知事=自
村上 猛(むらかみ たけし) 73 無新 アパート経営
浜中 都己(はまなか さとみ) 62 無新 コンサル会社社長
小林 一哉