慶大が発表「女子新入学生向け」の食事支援が物議 “貧困男子学生は切り捨て”の声噴出…専門家からも疑問の声(2024年4月19日)

慶應大学の説明「一人暮らしは女子のほうが家賃がかかる」


 ワタミ慶應大学苦学生向けに提供する『スマートプレート』『ミールキット』は、ともに管理栄養士が献立を考えており、健康的な食事であることは確か。円安や燃料高の影響から物価高が続いている中での大学側からの食事無償提供に、喜びの声を上げた学生も少なくないことだろう。

 ただ、前述した通り、女子新入学生のみを支援対象とした支援(1)と、男子学生も支援対象に含まれる支援(2)で、内容に大きな開きがあるのもまた事実。そのため、X(旧ツイッター)では、

《男子学生も使える(2)の支援のほうは、女子限定の(1)と比べて支援内容が薄すぎる》
《貧困男子学生切り捨てる理由になってないよ。男女分けないで家賃と親の収入環境で支援対象決めればいいじゃん》

 などと違和感を抱く声も上がっている。慶大の公式Xでは《支援(1)は東京での一人暮らしは女子学生のほうが男子学生より住居費がかかることを踏まえての企画です》と説明をしているが、

《お金がかかるという点では、むしろ男性は必須カロリーが多い分、食費が女性より多くなります》

 など、大学側が示した見解に対してツッコミが噴出し、炎上騒動にまで発展しているのだ。

■専門家も「説明が不十分」と指摘

 慶大がワタミと組んでスタートさせようとしている女子学生向けの食事支援。X上には《「女子」に限る理由は全くわかりません》と大学側の説明に対して疑問の声を抱いたユーザーの意見も少なくないのだが、就活事情や労働問題に詳しい千葉商科大学准教授・常見陽平氏も「率直に、なぜ女子だけ支援が手厚いのかという説明が不十分」と問題点を指摘する。

「まず社会的な総論として、男女間に賃金格差があり、その差は少しずつ縮まっているとはいえ、まだまだ女性のほうが低い状況があるのは確かです。内閣府が調査したデータによれば、2021年時点で男性一般労働者の給与水準を100としたとき、女性の給与水準は75.2にとどまります。他にも非正規雇用の比率は女性のほうが高いなど、男女格差が社会の中に存在することは明らかです」(常見氏)

 ただし、今回は社会人ではなく、あくまでも学生を対象とした話。「なぜ、女性に対する支援が必要なのかの論拠が示されていないのが、慶應大学の学生支援の問題点だ」と常見氏は話す。

「あくまで例ですが、大学生活においても女子のほうがアルバイトで稼げる給料が少ないとか、セキュリティ面を考慮した結果、“女子のほうが住居費がかかる”というのならデータを示してもらいたい。女性のほうが平均的にこれだけ高い家賃を払っている、というように具体的な背景とデータを明記してくれたら、新入女子学生だけを限定とした支援を行なうのも納得できます。

“明らかに女性が食費に困っている”という実態が慶大のプレスリリースには描かれていないので、唐突感があり、さまざまな憶測や批判を呼んだのではないでしょうか」(前同)

 さらに常見氏は「ミールキットと弁当(スマートプレート)という支援内容の違いも気になる」と言う。

「支援(1)はミールキットではなく弁当でもいいわけですよね。考えすぎなのかもしれませんが、ミールキット=料理をするのは女性だという概念をもとに、支援内容を決めたのならば、これぞ旧来の価値観の押しつけです。女性だからといった性別を押しつけるような内容のCMは、過去に何度も炎上してきましたよね」(同)

 もちろん、慶大が学生向けに提供する食事支援は、貧困に悩む学生の大学生活におけるセーフティネットになるのだろう。そんな中、常見氏はこう続ける。

「学生の食事生活を支援するのがダメだとは決して言いませんが、”なぜ、これがこの人たちに必要なのか”ということが、プレスリリースを読んでも書いてありません。もっと言えば、慶應大学はなぜワタミと組んで学生支援を行なうのか、という点も説明不足。支援に使われる費用は学費から捻出されている可能性もあるわけですし、これでは学内外から疑問の声が上がるのも致し方ありません」(同)

 なお、なぜ支援内容を”女子新入学生”とその他の学生で切り分けたのか、支援(1)と支援(2)の内容の違いの根拠などについて慶應大学に問い合わせたところ、支援内容を管轄する「慶應義塾協生環境推進室」からは回答なし。広報室は“回答は差し控えさせていただきます”とのことだった。

ピンズバNEWS編集部  

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