「老後は年金を収入源に悠々自適な生活を送りたい」と考えている人もいるでしょう。しかし、「自分が将来いくら年金を受け取れるか」ご存知でしょうか。
【受給割合をチェック】厚生年金の受給割合をグラフにて大公開!個人差に注目
厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は「14万3973円」となっています(※国民年金を含む)。
上記はあくまで全体の平均であり、実際には月に14万円も受け取れない人もいます。 では、具体的に厚生年金の平均月額である14万円を受け取っている人はどのくらいいるのでしょうか。 2024年度には年金額が2.7%引き上げられることが決まりましたが、実際のシニアの年金事情は難しいものがあります。
本記事では、「厚生年金の受給割合」や「年金の仕組み」について詳しく紹介していきます。
後半では、平均月額となる年金14万円台を受給するために現役時代の年収はいくら必要なのかについても紹介しているので、あわせて参考にしてください。
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厚生年金と国民年金の違いは何?公的年金の仕組みをおさらい
まずは、日本の公的年金制度の仕組みについておさらいしておきましょう。
日本の公的年金制度は「2階建て構造」となっており、1階部分の「国民年金」と2階部分の「厚生年金」で構成されています。 国民年金は、日本に住む20~60歳未満の人が原則加入対象となっており、保険料は一律です。
仮に40年間未納なく保険料を支払っている場合は、老後に国民年金を満額受給できます。
参考までに、厚生労働省の「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2024年度の国民年金の満額受給額は「6万8000円」となります。
一方で厚生年金は、主に会社員や公務員が加入対象で、保険料は現役時代の年収によって異なり、受け取れる年金額も年収や加入期間によって個人差が生じます。
なお、厚生年金は国民年金に「上乗せされる形」で支給されるため、国民年金のみ受給の人よりも受給額が多い傾向にあります。 参考までに、厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金・国民年金の平均月額は下記の結果となりました。
・【厚生年金】平均月額:14万3973円(国民年金を含む)
・【国民年金】平均月額:5万6316円
将来受け取れる受給額が「国民年金のみか」「厚生年金と国民年金どちらもか」で、受け取れる額が大きく変わるため、ご自身の加入している年金保険を確認しておけると良いです。
なお、前述したように厚生年金の場合は、現役時代の年収・加入期間などによって受給額が異なるため、一概に全ての人が平均額を受け取れるとは限りません。 次章にて、厚生年金の受給割合について見ていきましょう。
月14万円を受け取れる人は5.9%。厚生年金の受給割合
厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の月額階級別の受給者数は下記の結果となっています。
・1万円未満:6万1358人
・1万円以上~2万円未満:1万5728人
・2万円以上~3万円未満:5万4921人
・3万円以上~4万円未満:9万5172人
・4万円以上~5万円未満:10万2402人
・5万円以上~6万円未満:15万2773人
・6万円以上~7万円未満:41万1749人
・7万円以上~8万円未満:68万7473人
・8万円以上~9万円未満:92万8511人
・9万円以上~10万円未満:112万3972人
・10万円以上~11万円未満:112万7493人
・11万円以上~12万円未満:103万4254人
・12万円以上~13万円未満:94万5662人
・13万円以上~14万円未満:92万5503人
・14万円以上~15万円未満:95万3156人
・15万円以上~16万円未満:99万4044人
・16万円以上~17万円未満:104万730人
・17万円以上~18万円未満:105万8410人
・18万円以上~19万円未満:101万554人
・19万円以上~20万円未満:90万9998人
・20万円以上~21万円未満:75万9086人
・21万円以上~22万円未満:56万9206人
・22万円以上~23万円未満:38万3582人
・23万円以上~24万円未満:25万3529人
・24万円以上~25万円未満:16万6281人
・25万円以上~26万円未満:10万2291人
・26万円以上~27万円未満:5万9766人
・27万円以上~28万円未満:3万3463人
・28万円以上~29万円未満:1万5793人
・29万円以上~30万円未満:7351人
・30万円以上~:1万2490人
上記表の厚生年金受給者の「総数」と「平均月額である14万台の受給者数」は下記のとおりです。
・厚生年金受給権者:1599万6701人
・厚生年金を月14万円受け取っている人:95万3156人
上記を割合にすると「95万3156人÷1599万6701人=5.9%」となります。
月に14万円以上に幅を広げた場合でも、その割合は約52%であり、約半数の人は年金月額14万円未満であることがわかります。
受給割合の実態を知り「思ったよりも年金が受け取れない」と感じた方は、ご自身の年金見込額を事前に確認し、不足分を今のうちから備えておけると良いです。
年金見込額を知りたい場合は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認することをおすすめします。
厚生年金を月14万円受け取れる人の現役時代の年収は?
最後に厚生年金の平均月額「14万円」を老後に受け取れる人の、現役時代の年収を確認しておきましょう。
ご自身の現在の年収と、本章で紹介する「老後に14万円を受け取れる年収」を比較してみてください。
厚生年金の受給額は「2003年3月以前の加入期間」と「2003年4月以降の加入期間」で計算式が異なります。
・2003年3月以前の加入期間:平均標準報酬月額×(7.125/1000)×2003年3月以前の加入月数
・2003年4月以降の加入期間:平均標準報酬額×(5.481/1000)×2003年4月以降の加入月数
※平均標準報酬額:勤務先から支給される報酬の平均額で、月給と賞与を合わせて12で割った金額を指す
本章では「2003年4月以降に加入した」想定で、年金月額14万円の人の現役時代の年収目安を算出していきます。
試算条件は下記のとおりです。
・国民年金受給額(満額):81万6000円
・厚生年金加入期間:38年間
・配偶者や扶養家族はいない
厚生年金「月額14万円」を受給すると想定した場合、年間で168万円を受給することになり、厚生年金には国民年金の受給額も含まれているため、まずは国民年金部分を差し引きます。
国民年金81万6000円を差し引くと、厚生年金のみでは86万4000円受給する必要があるため、平均標準報酬月額は下記のように計算することができます。
・平均標準報酬額×5.481/1000×456ヶ月(38年間)=86万4000円
・平均標準報酬額=約34万円
上記の計算式から、「平均標準報酬額」は約34万円となり、38年間の平均年収が「約408万円」であれば、厚生年金として月額14万円を受け取れる計算です。
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は458万円であることから、一般的な会社員世帯の場合は、厚生年金として月額14万円もらえる見込みはあるとうかがえます。
留意点として、上記はあくまで38年間継続して、平均年収が408万円だった場合を想定しており、年齢とともに年収が増減している方の場合は、目安の1つとして考えておけると良いです。
自分の将来受け取れる年金額を確認しておこう
本記事では、「厚生年金の受給割合」や「年金の仕組み」について詳しく紹介していきました。
厚生年金として平均額以上を受け取っている人は約半数であり、約2人に1人が厚生年金の受給額が14万円未満となっています。
なお、本記事で紹介した年金額はあくまで現在のシニア世代のものであり、今後もこの年金水準が維持されるとは限りません。
ねんきん定期便やねんきんネットでは、ご自身の将来受け取れるリアルな年金額が確認できるため、今のうちに確認し、将来のための老後資金の準備をしておけると良いでしょう。
参考資料
・厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
・国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」
・厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
・日本年金機構「老齢年金ガイド 令和6年度版」
太田 彩子