「大東亜戦争」陸自部隊の公式アカウントがSNS投稿 反省が薄れている? 自衛隊幹部は靖国に参拝も(2024年4月8日『東京新聞』)

 
 陸上自衛隊大宮駐屯地(さいたま市)の第32普通科連隊が、X(旧ツイッター)の投稿で、アジアへの侵略戦争を美化する考えがあるとされる「大東亜戦争」という言葉を使っていた。政府は現在、公文書などでこの言葉を使っていない。自衛隊を巡っては、幹部らによる靖国神社の集団参拝などが明らかになっており、戦争への反省が薄れているとの指摘も出ている。

硫黄島での式典について紹介

 同隊は、先月末に硫黄島(東京都小笠原村)で開かれた日米硫黄島戦没者合同慰霊追悼顕彰式に参加したことを5日の投稿で紹介。硫黄島の説明として「大東亜戦争最大の激戦地」と表現した。
「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島」と表現した投稿の一部(陸上自衛隊第32普通科連隊のX公式アカウントから、スクリーンショット

大東亜戦争最大の激戦地硫黄島」と表現した投稿の一部(陸上自衛隊第32普通科連隊のX公式アカウントから、スクリーンショット

 林芳正官房長官は8日の記者会見で「『大東亜戦争』という用語は現在、一般に政府として公文書で使用していない」と指摘。同隊の投稿について「防衛省が事実関係を確認している」と述べるにとどめた。
 日本政府は1941年12月の真珠湾攻撃の直後、欧米からアジアを解放し「大東亜共栄圏の確立を図る」との考えに基づき、「大東亜戦争」と呼ぶことを閣議決定した。戦後、連合国軍総司令部GHQ)は公文書などで「大東亜戦争」という表現を使うことを禁止。第2次大戦のうちアジア太平洋地域で日本が戦った戦争は「太平洋戦争」という呼称が定着している。

◆過去の歴史観への回帰なのか

 自衛隊では1月、小林弘樹陸上幕僚副長(当時)ら22人が靖国神社を参拝。今月1日には元海将の大塚海夫氏が同神社の宮司に就任した。同神社にはA級戦犯が合祀(ごうし)されている。
 戦後賠償問題などに詳しい内田雅敏弁護士は「『大東亜戦争』という言葉の背後には、近代以降に日本が戦ったすべての戦争が正しかったという歴史観がある」と指摘。靖国神社はそうした歴史観を掲げおり「幹部の参拝や『大東亜戦争』という言葉遣いから、自衛隊がそうした歴史観に回帰しかねないと危惧している」と話した。(中沢穣)

#32連隊 の隊員が、大東亜戦争最大の激戦地硫黄島において開催された日米硫黄島戦没者合同慰霊追悼顕彰式に旗衛隊として参加しました。

慎んで祖国のために尊い命を捧げた
日米双方の英霊のご冥福をお祈りします。#32普通科連隊#大宮駐屯地#ALTをご覧ください https://t.co/Y9j9ePIOho pic.twitter.com/Sfm2uuohll

— 第32普通科連隊(公式) (@32nd_inf_Regt) April 5, 2024