俳優高橋惠子さん 「何を感じるのか楽しみ」 新国立劇場の話題作出演<会いたい 聞きたい>(2024年4月7日『北海道新聞』)

 1970年のデビュー以来、半世紀を超える芸歴を誇りながらも、常にみずみずしい魅力を放ち続ける釧路管内標茶町出身の俳優高橋惠子さん。新たな境地を目指し、4月13日から始まる新国立劇場(東京)の舞台「デカローグ」に挑戦します。ポーランドの映画監督クシシュトフ・キェシロフスキの傑作映像作品を全10話構成で舞台化するという、同劇場でも前例のない大規模プロジェクトです。実力派俳優がそろう中、高橋さんは第1話に出演します。作品への意欲や故郷への思いを聞きました。(東京報道 中村公美)
名作「デカローグ」に出演する高橋惠子さん=インタビューはすべて玉田順一撮影

名作「デカローグ」に出演する高橋惠子さん=インタビューはすべて玉田順一撮影

 たかはし・けいこ 1955年生まれ。12歳から北海道を離れ東京で育つ。1970年、映画「高校生ブルース」で主演を務め、デビュー。映画「おさな妻」でゴールデンアロー賞新人賞を受賞し、その後も受賞多数。ドラマ「太陽にほえろ!」「金曜日の妻たちへⅡ 男たちよ、元気かい?」や舞台、CMなど幅広く活躍し、2021年には「HOPE」でミュージカル初主演。1982年に映画監督の高橋伴明さんと結婚、1男1女がいる。

■大先輩から言われたこと

 ――「デカローグ」に出演を決めた理由は何でしょう。
 「内容に興味がありましたし、小川絵梨子さん(新国立劇場演劇芸術監督)の演出ということで、ぜひ出演させていただきたいと思いました。小川さん演出の舞台はこれで3本目。いつも衝撃を受け、自身の細胞まで活性化してもらえるような演出家です。今回は『気持ちで芝居をしない』ということを教えてもらい、衝撃を受けました。実は同じようなことを、かつて大先輩の女優・杉村春子さんに言われたことがあるのですが、当時はいまひとつわからなかった。しかし、今回の小川さんの演出で、人は『悲しい気持ちになろう、ここでうれしくなる』と思って動いているわけではないと実感したのです。このような気づきをもたらしていただき、本当に幸せなことだと思っています。わたしは年齢というものを気にしません。『デカローグ』でおいっ子のパベウを演じる子役の石井舜君も1人の俳優として見ていますし、教わることがたくさんあります」
 「デカローグ」 ポーランドの名匠キェシロフスキによる連作ドラマ。旧約聖書十戒をモチーフに、ワルシャワの巨大アパートに暮らす人々の人生模様を全10話で描く。テレビ放映用に撮影されたが、放映前に5話と6話を劇場用映画に編集し「殺人に関する短いフィルム」「愛に関する短いフィルム」として発表。前者は1988年のカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞するなど高い評価を受けた。テレビシリーズも世界で劇場公開。新国立劇場による舞台版は同劇場の小川絵梨子演劇芸術監督と、上村聡史さんが5話ずつ演出を担当。各話は上演時間1時間前後で独立した話だが、実はつながっているという構成だ。「1~4話」は4月13日~5月6日、「5、6話」は5月18日~6月2日、「7~10話」は6月22日~7月15日に上演する。チケットの申し込み、問い合わせは新国立劇場ボックスオフィス、電話03・5352・9999(午前10時~午後6時)へ。
「デカローグ」の魅力を語る高橋さん

「デカローグ」の魅力を語る高橋さん

 ――作品の魅力や見どころを教えてください。
 「私が出演する1話は、台本を読んだあとに時が止まってしまったような感覚になりました。喪失感や悲しみを描いていますが、そこに愛があるから悲しみがある。生きている中で、本当に大事にしたいものは何か、ということが伝わる内容だと思います。1話ごとが独立した話ですが、全話を通じて感じ取るものがあると思う。ですから私自身も10話まで見て、何を感じるのかということが楽しみです」