国民愚弄の裏金議員党内処分 ふざけた内幕と今後の内ゲバ(上)(2024年4月5日『日刊ゲンダイ』)

 
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ふざけた“党内処分”という茶番劇(処分が決まり、取材に応じる岸田首相=4日)/(C)共同通信社
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自民党“ハレンチ懇親会”が世界に大拡散…英BBC皮切りに比メディアは「恥」とバッサリ 自民にまたまた醜聞!現役CAの“カスハラ告発手紙”を吉幾三に暴露された参院議員を直撃した 二階元幹事長が次期衆院選への不出馬表明…自民裏金処分めぐり岸田首相との“刺し合い”に先手

 いったい自民党というハレンチ集団は、どこまで国民を愚弄すれば気が済むのか。派閥パーティー裏金事件が火を噴いて5カ月。実態解明が一切進まないまま、“やってる感”の末の「処分」パフォーマンスで幕引きとは、茶番劇にもほどがあるというものだ。

 自民党は4日開いた党紀委員会で裏金議員ら39人の処分を決定した。安倍派座長だった塩谷元文科相と同派参院トップだった世耕前参院幹事長は党規約で2番目に重い「離党勧告」。事務総長経験者の下村元文科相と西村前経産相は3番目の「党員資格停止1年」、高木前国対委員長は「同6カ月」。残りの安倍派幹部や二階派幹部は別表の通り。ほとんど実害のない軽い処分で、他に「6カ月の役職停止」「戒告」などと処分は6段階に区分けされた。

 もっとも、ほぼ事前に報じられていた通りの内容で、処分された議員らが「心よりおわび」などのコメントを続々発表しても鼻白む。そもそも自民党の内輪の処分である。国会議員のバッジを外すわけでもなく、大仰に見せているだけで、当人たちは内心、痛くもかゆくもないんじゃないか。

 処分決定を受け、岸田首相も「深刻な政治不信を引き起こし心からおわびする」と発言したが、こんな処分に自民党員だって納得しないだろう。

 国民が知りたいのは、なぜ、何のために裏金をつくり、何に使ったのか、だ。ところが、お手盛り調査でノラリクラリ。政治倫理審査会では知らぬ存ぜぬ。自浄能力のなさを見せつけた。

 加えて、呆れ果てるのは、裏金をつくっていても「5年間で500万円未満」ならば、茂木幹事長の「注意」だけの無罪放免となったことだ。その数、約40人に上る。

 組織ぐるみの裏金づくりの悪質さは、金額の多寡によらない。政治資金収支報告書の不記載を“修正”しても使途は「不明」だらけで、本来、裏金は「雑所得」として所得税の課税対象になる。ところがこの期に及んでも、誰ひとりとして納税する気がないのだから厚顔にもほどがある。

「国に収めるべきお金を懐に入れてしまったのだから、脱税は窃盗より悪質で大変な犯罪です。500万円とか金額の問題ではなく、少額でも許されない。岸田首相という泥棒の親分が子分を適当に処分する。国民をナメ切っています」(立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏=税法)

 国民の税金は1円も負けてもらえないのに、この不公平は何なんだ。岸田はこれで裏金事件にフタをして逃げるつもりだろうが、そうは問屋が卸さない。納税者は脱税疑惑集団のフザケた線引きを忘れない。必ず鉄槌を下すと、改めて決意しているはずだ。

巨額の裏金をつくった萩生田の大甘処分と呆れた裏側

政倫審にも出てこなかった萩生田光一前政調会長(C)日刊ゲンダイ
政倫審にも出てこなかった萩生田光一政調会長(C)日刊ゲンダイ
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自民党“ハレンチ懇親会”が世界に大拡散…英BBC皮切りに比メディアは「恥」とバッサリ 自民にまたまた醜聞!現役CAの“カスハラ告発手紙”を吉幾三に暴露された参院議員を直撃した 二階元幹事長が次期衆院選への不出馬表明…自民裏金処分めぐり岸田首相との“刺し合い”に先手

 2時間以上続いた党紀委は大荒れで、出席者からは「処分が厳しすぎるのではないか」といった声も上がったそうだ。

 まるで、侃々諤々の議論が交わされたかのようだが、そんなわけはない。始まる前から処分内容は執行部が決定済みで、委員会は決定事項をなぞるだけ。中身はスカスカだ。肝心の実態解明を脇に置いた、いつもの“やってる感”である。

 それに、今回の処分の線引きには、執行部の個人的な「好き嫌い」がバッチリと反映されている。象徴的なのは、萩生田前政調会長の扱いだ。組織的な裏金づくりをやっていた安倍派の幹部であり、裏金額は党内3位の2728万円。一部を、事務所の机の鍵付きの引き出しで管理してもいた。まるで、脱税企業トップの「現金隠し」のようなヤリ口である。にもかかわらず、下されたのは1年間の「役職停止」という大甘処分だ。

「萩生田さんを軽い処分で済ますことにこだわったのは、茂木幹事長でした。次期総裁選を見据え、萩生田さんと、彼に連なる安倍派の若手・中堅を取り込もうと画策したのです。萩生田さんのバックにいる森元首相への配慮もあるのでしょう。岸田総理も、非主流派の菅前総理らとパイプがある萩生田さんに厳しい処分を下すべきではないと判断したようだ。敵に回すと手痛いしっぺ返しを食らいかねない。味方につけておきたいと考えたそうです」(官邸事情通)

 党内政局で処分の軽重。ほとほと呆れ返る。

 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。

「萩生田氏は党内トップクラスの裏金額なのに、政倫審にも出席せず、説明から逃げていました。本来、真っ先に重い処分を下すべきでしょう。なのに、岸田首相は自らの延命、茂木幹事長は勢力拡大のために軽い処分にしたわけですから、あまりにも見苦しい。そもそも、裏金事件の実態を解明して、それぞれの議員の悪質さを評価した上で処分内容を決めるべきでした。それをしなかったのは、早期幕引きを狙ったからに他ならない。あらゆる意味で国民をバカにした対応というしかありません」

 裏金政党は一事が万事、この調子だ。