非正規公務員 給与抑制の対応は悪質だ(2024年3月31日『西日本新聞』-「社説」)

 自治体の非正規職員(会計年度任用職員)はいくら専門知識を持ち、住民に信頼されていても、低賃金と不安定雇用を余儀なくされる。この年度末も不本意な雇い止めに遭う人がいる。

 非正規職員の働きなしに、自治体の仕事は回らない。首長や議会はよく分かっているはずだ。待遇の見直しを強く求める。

 昨年4月時点の会計年度任用職員は約66万人で、3年間で4万人近く増えた。全職員の半数近い自治体も珍しくない。その多くは女性だ。

 担う仕事は多岐にわたる。一般事務だけでなく、図書館司書、保育士、スクールカウンセラーのように知識や経験が求められる分野が少なくない。プライバシーに関わる住民相談にも携わっている。

 日頃から正規職員と変わらない仕事をしているにもかかわらず、平均年収は220万円台という労働組合の調査結果もある。仕事の内容と責任に見合う額とは言えまい。

 非正規職員の大半は、国が待遇改善のため2020年度に導入した会計年度任用職員に移行した。同年度からボーナスの期末手当が支給され、24年度からは勤勉手当も加えられることになった。

 ところが待遇改善に反する動きが出ている。総務省によると、全国の139自治体は勤勉手当を支給する代わりに月給や期末手当を減らす予定だという。

 減額幅は自治体によって異なり、新たに勤勉手当を受け取っても年収が変わらない事例もある。賃金を不当に抑える悪質な行為だ。

 それだけではない。23年度途中に決まった公務員給与の引き上げでも、正規職員は年度初めの4月にさかのぼって増額したのに、非正規職員は24年度に先送りする自治体が確認された。

 民間企業では人手を確保する目的もあり、賃上げをパート労働者にも適用する動きが目立つ。自治体の対応とはあまりにも対照的だ。

 自治体が非正規職員を増やしたのは厳しい財政事情による。人件費を削るために正規職員を減らし、非正規職員に置き換えた結果が今日のいびつな状況である。

 雇い止めも問題だ。会計年度任用職員の任期は1年以内で、自治体の裁量で再雇用できる。多くは継続雇用を制限しており、設定された期間が過ぎれば、試験に合格しないと仕事を続けられない場合がある。

 特定業務に精通した職員の不安定雇用は、公共サービスにしわ寄せが及びかねない。

 非正規職員の現状に問題意識を持つ自治体は、月給を引き上げたり、正規採用の門戸を広げたり、独自の待遇改善に取り組んでいる。こうした動きを広げたい。

 雇い止めで生活に困窮する人もいる。住民の暮らしを守るべき自治体が、雇用している人の生活を守れない。そのような矛盾はなくすべきだ。