「兵器ローン法案に賛成したのは誰か」の記録が残らない 「押しボタン」休止中の対応、参院は検討すらせず(2024年3月29日『東京新聞』)

 
 28日に成立した「兵器ローン」の例外措置を恒久化する改正法の参院本会議での採決に関し、参院事務局は会派や議員の賛否の記録を残さず、採決結果のみを公表する方針だ。2020年に本会議での「押しボタン式」の投票を休止し、個々の議員の意向が分からなくなったためだが、重要法案の採決で誰がどのような票を投じたか、公式資料に基づく事後の検証ができない状況が続いている。

◆議長が賛成議員の起立を求めるだけ

 参院では「各議員の政治責任をより一層明確にできる」という理由で、1998年に個々の議員の賛否が分かる押しボタン式を導入し、採決結果をネット上で公表してきた。しかし、20年4月に新型コロナウイルスの感染対策で座席の間隔を空けるようにした際に使用を休止。記名投票する予算案などを除き、法案や補正予算案は個別の賛否を把握しない運用になった。
参院本会議場議席の投票ボタン

参院本会議場議席の投票ボタン

 押しボタン式投票は装置の改修があるため、25年の通常国会まで再開されない見通し。28日の参院本会議での改正法の採決では、尾辻秀久議長が賛成する議員に起立を求め、多数を占めたことを自身の目で確かめて可決を宣言した。

◆是正を求める声があるのに対応せず

 本紙は昨年12月、法案などの会派や議員の賛否は、選挙の際に有権者の判断材料になる重要な情報だと指摘し、識者からも是正を求める声が出ていることを報じた。参院事務局によると、その後に是正策は議論されていない。
 参院議院運営委員会浅尾慶一郎委員長(自民)は本紙の取材に「押しボタン式の再開をもって是正としたい。改修工事には一定程度時間がかかり、他に(賛否の詳細を確認する)方法がない」と説明した。
 国会の採決に関し、衆院は会派ごとの賛否を採決後に公表しているが、押しボタン式を導入しておらず、個別の議員の賛否は分からない。本紙は、与野党で賛否が割れる重要法案などは各会派などに取材して賛否を確かめている。(我那覇圭)