宝塚俳優死亡、「パワハラ」認識で合意 幹部ら遺族に謝罪(2024年3月28日『日本経済新聞』)

 
記者会見で謝罪する阪急阪神HDの嶋田泰夫社長(中)=28日、大阪府豊中市
 

宝塚歌劇団兵庫県宝塚市)の俳優の女性が死亡した問題で、歌劇団を運営する阪急電鉄の親会社、阪急阪神ホールディングス(HD)は28日、上級生らによるパワハラがあったことを認める合意書を遺族側と交わした。大阪府内で記者会見を開き、明らかにした。同社の角和夫会長らが遺族に直接謝罪したという。

記者会見には嶋田泰夫社長や歌劇団の村上浩爾理事長らが出席。嶋田氏は冒頭、亡くなった女性に哀悼の意を表したうえで「ご遺族の心情を思うと、取り返しの付かないことをして申し訳ない」と陳謝した。

問題を巡っては、歌劇団は当初、23年11月に公表した調査報告書で、上級生らによるパワハラは確認できなかったと主張していた。これに対し遺族側は複数のパワハラ行為があったと反論。双方が協議を続けていた。

この日の記者会見で、阪急側は▽女性の髪をヘアアイロンで無理やり巻きやけどを負わせた▽人格否定のような言葉を浴びせた▽深夜帯に指導・叱責し帰宅できない状況になった――など、上級生や劇団幹部らによる14項目のハラスメントがあったと認め、遺族側と合意書を締結したと明らかにした。

遺族側代理人川人博弁護士も28日午後に都内で記者会見を開き、歌劇団側と合意に達したと発表した。合意について「歌劇団側が明確に多数のパワハラの存在を認め、遺族に謝罪したことの意義は大きい」と説明した。

「相当数」の上級生らが個人として、遺族に謝罪文を出したことも明らかにした。

俳優の母親は代理人を通じて発表した声明で「言い表せないたくさんの複雑な思いがある」とコメントした。「娘の尊厳を守りたい一心」で事実を訴え続けてきたと振り返り「娘に会いたい。生きていてほしかった」と心境を明かした。

合意書には、阪急側が「健康な職場を作るために全力を尽くす」ことを誓約するとともに、遺族側に慰謝料を支払うことなどが盛り込まれたという。

 

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