どちらの道も(2024年3月17日『高知新聞』-「小社会」)

 携帯端末の画面に「あなたの借金、減らせます」みたいな広告が出る。「司法書士」「弁護士」といった単語の入った相談サイトなどいろいろだ。

 有効なものも、そうでないものもあるだろう。借金の事情はさまざま。サイトのうたい文句通りに事が運ぶのかいぶかりもするが、にっちもさっちもいかなくなった時、手を打たなければ人生は壊れる。

 これはどうしたものか。まさか財務相が「もう、なんともならなくて…」とサイトに相談するわけにはいくまい。国の借金、国債残高は2023年度末で1068兆円。40年前の8倍に増えた。

 毎日の暮らしでは考えない単位だからピンとこないが、これがどのぐらいの借金か。たとえば24年度以降、償還のための金利が2%上がると、26年度には利払いの分だけで年7・2兆円増加。1年の防衛費に近い額が吹き飛ぶ。

 現役の財務次官が「もう黙っているわけにはいかない」「国家財政は破たんする」と月刊誌に異例の寄稿をしたのは2年半前。これから生まれる将来世代は、税金などの支払い分と年金などの受け取り分の差し引きが「マイナス1億円」という信じがたい試算もある。

 5億、6億の裏金の説明もできない政治に1千兆円の借財の始末を問うても…と気はなえるが、このままでは将来世代が貧する。日銀の金利政策。マイナスもダメ。上げても泥沼。政治がまともに語らない「不都合な真実」がそこにある。