災害時の道路の緊急復旧計画、17府県で未策定…大規模地震の想定ない日本海側で遅れ(2024年3月17日)

 

 

 災害発生時に、道路のがれきなどを取り除き、緊急車両の通行を可能にする「道路啓開(緊急復旧)計画」が、17府県で策定されていないことがわかった。国の大規模地震の被害想定がない日本海側で多く、能登半島地震の被災地も未策定だ。復旧のルートや手順を事前に定めた計画があれば、災害時によりスムーズな対応が期待できるとして、国などは策定を急いでいる。

 

【図】道路啓開計画のない府県

 

 国土交通省によると、同省の各地方整備局管内で計画がないのは東北の6県(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)、北陸の3県(新潟、富山、石川)、関東の4県(茨城、栃木、千葉、山梨)、近畿の4府県(福井、滋賀、京都、奈良)。総務省は昨年4月、未策定の地域について国主体で作るよう国交省に勧告した。

 能登半島地震で、国は内陸部の主要道路から沿岸に向けて、複数の道路をくしの歯状に緊急復旧させる手法を採った。東日本大震災では効果を発揮したが、今回は道路が各地で寸断し、孤立集落解消に1か月以上を要し、物資支援も遅れた。

 北陸地方整備局と3県は2月末、計画策定に向けた協議会を初開催した。同局の武藤聡・道路部長は「能登半島地震の課題を整理し、計画に反映したい」と述べた。4月以降、各県に作業部会を設けて検討を進める。

 関東地方整備局は今月4日、栃木県との初会合を開いた。9月中の策定を目指す。近畿地方整備局は2月上旬までに4府県に作業部会を設置した。東北地方整備局は昨年11月に計画作りに着手した。2024年度中に策定する方針。震災での実績はあるが計画はなく、最新の津波浸水想定や道路網を反映させる。

 内閣府によると、国の被害想定があるのは南海トラフ、首都直下など主に太平洋側を震源とする5地震。計画は想定に基づき、国交省を中心に作ってきた。日本海側でも過去に日本海中部地震(1983年)や新潟県中越地震(2004年)などが起きているが、策定の機運は高まらなかった。

 中部版「くしの歯作戦」策定会議の座長で名古屋都市センター長の奥野信宏氏は、「能登のような災害はどこでも起こりうる。被害想定がなくても、まずは危険箇所の確認を行い、地形的特徴や交通事情に合わせた計画を作ることが重要だ」と指摘する。

◆道路啓開(緊急復旧)計画=災害発生時に道路上の最低限のがれき処理や簡易な段差補修を行い、救命や救援のための緊急車両を通行させる計画。復旧のルートや作業手順、人員や資機材の確保の方法、関係機関との連絡体制などを盛り込む。

 

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