LINEヤフー 個人情報の管理体制を改めよ(2024年3月12日『読売新聞』-「社説」)

 国内で普及した無料通信アプリを巡り、個人情報の 杜撰ずさん な管理が続くようでは困る。運営するLINEヤフーは責任の重さを自覚し、管理体制を改める必要がある。

 LINEヤフーは昨年11月、無料通信アプリ「LINE」の利用者などの個人情報約44万件が 漏洩ろうえい した可能性があると発表した。その後の調査で、流出が疑われる件数は約52万件にまで増えた。

 漏洩の恐れがある情報は、利用者の性別、年代などが中心だが、約2万件はアプリを使って通話を行った日時などだったという。

 電気通信事業法は、事業者が通信内容だけでなく、通信の日時や発信場所なども「通信の秘密」として保護するよう定めている。今回の漏洩は、その規定に抵触するもので、看過できない。

 LINEのサービスは2011年に始まり、当初の運営会社は韓国IT大手ネイバーの子会社だった。21年にヤフーを傘下に持つ国内IT大手と経営統合したが、ネイバーは今もLINEヤフーの持ち株会社に出資する大株主だ。

 今回の流出は、LINEヤフーがデータ管理などを委託するネイバーの子会社が不正アクセスを受け、LINE側のサーバーにも侵入されて起きたという。

 ネイバーの子会社とLINE側は、アクセスに関する共通の認証基盤を使っていた。

 事態を重く見た総務省は今月、LINEヤフーの行政指導に踏み切った。業務委託先への管理・監督の強化のほか、資本関係を含めた経営体制の見直しも求めた。

 LINEヤフー側からみて、業務委託先は大株主の子会社だ。大株主の力が強く、管理が行き届かなかった可能性があるという。

 LINEヤフーの持ち株会社には、携帯電話大手ソフトバンクとネイバーが折半出資している。ソフトバンクを含め、適切な経営体制のあり方を検討してほしい。

 LINEアプリでは21年に、業務委託先の中国企業の社員が、利用者の個人情報を閲覧できる状態になっていたことがわかり、総務省が行政指導を行った。

 ヤフーの検索サービスでは昨年8月、利用者に十分な通知をせずに、ネイバーに位置情報を提供していたことが発覚している。

 IT事業で個人情報の保護は最重要課題だ。LINEは国内の利用者が1億人に迫り、自治体が行政手続きで使うなど、公共インフラともなっている。LINEヤフーは、利用者が安心して使える管理体制を構築せねばならない。