「三頭政治」が終焉し、岸田政権に新たなキーマン──自民党の森山裕総務会長(78)のことだ。岸田首相は7日、首相官邸で森山氏と約1時間、昼食を共にした。
政権発足以来、主流派として首相を支えてきたのは麻生派と茂木派。特に麻生副総裁は後見役として岸田首相の相談相手となってきた。しかし今年1月、岸田首相が「派閥解消」をブチ上げたことで、両者の関係はギクシャクし、修復不可能な状態。
「ポスト岸田」へ意欲を隠さない茂木幹事長を、岸田首相は以前から警戒してきた。
そんな中、“陰の総理”と呼ばれた麻生氏に取って代わるように政権での存在感を高めているのが森山氏なのだ。
同じ党4役メンバーでも、幹事長の茂木氏や選対委員長の小渕優子氏ほどの知名度はなく、地味な風貌の森山氏は、永田町以外では顔と名前が一致せず、「WHO?」だろう。
鹿児島市議を7期務めて国政に転じ、70歳で農水大臣として初入閣。国会対策委員長を歴代最長の4年務めた。
解散を表明したが、所属議員が10人に満たない最小派閥「近未来政治研究会」の会長だった。
2022年に配当金だけで4300万円を得た“株長者”でもあり、個人の政治資金パーティーを開いたことがない。
裏金問題「早期幕引き」で動く
裏金問題では、サボタージュが目立つ茂木に代わり、裏金議員らの“お手盛り”聞き取り調査や紙ぺら1枚の全議員アンケートを取り仕切った。スッタモンダした政治倫理審査会(政倫審)の開催や審査の公開・非公開も事実上、主導した。
下村元文科相が新たに政倫審に出席するのか注目されているが、森山氏は周辺に「もう衆院で政倫審はやらない」と話しているらしい。裏金議員の処分についても「党大会(17日)までに」と早期の幕引きで動いている。
「森山さんは選挙好きの主戦論者で、昨年6月の早期解散を岸田首相にけしかけていた。茂木幹事長が岸田首相と距離があるので、その間隙を縫って、党内の自身への求心力を増すチャンスだとみているのでしょう。脇役から表へ出てきた。今は総務会長ですが、幹事長への野心はあると思います」(ジャーナリスト・山田惠資氏)
自民党内で森山氏は、二階元幹事長や菅前首相ら非主流派に近いとされてきた。しかし、「今や岸田さんと森山さんは連携している。森山さんが事実上の幹事長のようなもの」(党内ベテラン)。
岸田首相が4月解散を否定した翌日に、森山氏は「きのうまでは、そうだったのだと思います」と意味深だった。解散風をあおりたい岸田首相をアシストしたのか。