土地の産物を意味する土産(どさん)にみやげの読みを当てたのは室町時代以降という。みやげの由来には諸説ある。「見上げ」が転じたといわれるが、「宮笥(みやけ)」(神から授かった器)に由来するという説もある
▲伊勢神宮などへの参拝は庶民の夢だったが、費用がかかるため「講」が組織された。積み立てたお金で代表者が参拝し、お札や縁起ものを持ち帰って御利益を分配した。みやげの習慣が根付いた要因という
▲明治初期に愛媛の蘭方医(らんぽうい)が伊勢参りをした記録が残る。土産には竹さじ20本、たばこ入れ9個を購入した。旅先での土産選びの王道だろう。持ち運びが楽で安価、贈っても嫌がられない
▲きょうはバレンタインデー。義理チョコも土産物文化の産物ではないか。商品価値より人間関係の円滑化に重点が置かれている。上司や同僚用に小型で安価なチョコを買うのは旅先の土産同様に合理的選択だろう
▲もっともコロナ禍で在宅勤務が増え、職場の人間関係も変化している。3年前の14日は日曜で、義理チョコの「絶滅危機」が叫ばれた。自分用のご褒美として高価な商品を選ぶ人も増えているそうだ
▲女性が男性にチョコレートを贈る習慣が広がったのは1960年代の高度成長期以降という。横並び一律の昭和の常識が通用しなくなり、多様性や寛容さが尊重される令和の時代。LGBTQなど性的少数者に配慮した商品を発売した菓子メーカーもある。「義理チョコをやめよう」とはいわないが、贈り物のあり方はもっと多様でいい。