働き手の減少 総合的な施策が急務だ(2024年2月14日『琉球新報』-「社説」)

 人口減少が地域コミュニティーの未来に大きな影を落としている。国の研究機関の推計によって、県内9町村で2050年時点の15~64歳の生産年齢人口が現在から4割以上減少することが分かった。
 いずれも本島北部や離島の自治体だが、減少率に差異はあれど、那覇市を含めた市部を含めて軒並み減る。県内で増加が見込まれるのは中城村のみ。遠い将来ではない。26年後のことである。

 いずれも本島北部や離島の自治体だが、減少率に差異はあれど、那覇市を含めた市部を含めて軒並み減る。県内で増加が見込まれるのは中城村のみ。遠い将来ではない。26年後のことである。
 地域で子どもを産み、育てたい人を徐々にでも増やしていくには、多様な人材が生き生きと暮らすことのできる社会の実現が必要だろう。主要政策に掲げ、抜本的な対応を強力に推進する必要がある。


 生産年齢人口が減少すれば、輸送や福祉など生活を維持するためのサービスが低下し、行政運営自体が難しくなる可能性がある。


 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した地域別推計人口で、全国では699市町村が2050年の生産年齢人口が20年比で半数未満となる。全市区町村の4割に当たる。


 国は14年から地方創生を掲げ、企業の移転や地域での人材育成、デジタル環境の整備などによって当地で働き、育て、長く暮らしていくことができるための政策は推進してきた。ただ、地方の人口減に歯止めが掛かっていない。約10年間で減り方を鈍化させた側面はあるだろうが、効率を検証して見直す必要がある。


 地方創生で進められてきた施策は、地方への流入を増やすという点で直接的な政策だった。必要なのは子どもを産み、育てたいと望む人が安心して仕事を続け、子育てのしやすい環境を実現できるかどうかではないか。


 ひとり親家庭を対象とした当事者団体と琉球新報によるアンケート調査では、女性のひとり親に非正規雇用が多いことが明らかとなった。スキルアップを目指そうにも、生活を優先させるため、その機会を逃している実態も分かった。誰もが産み育てやすい環境にはなっていない。

 外国人労働者への対応はどうか。今後はさまざまな分野への就労が考えられるが、彼らが将来を暮らしていくに十分な待遇と地域社会での受け入れが求められよう。人口減の問題は誰もが暮らしやすい社会の実現抜きに解決することは難しい。


 高齢化についても、見方を変えれば元気な高齢者が地域に多く存在することも意味する。地域社会の担い手として注目すべきだが、公共交通の維持など、高齢者の暮らしやすさも見落してはならない。


 県は人口施策の「沖縄21世紀ビジョンゆがふしまづくり計画」を改定し、目標を人口増から人口減に備えた持続可能な社会の維持へと本格的にシフトチェンジする。国の施策と合わせ、現実を見据えて危機感を県民と共有し、総合的な施策の展開を急いでもらいたい。