環境省は、専門家検討会が決定した対策方針案を受け、4月にも捕獲を国が支援する「指定管理鳥獣」にクマを追加するとした。都道府県による捕獲などの事業が国の交付金の対象になる。

 被害の多い本県や東北6県、北海道の知事会が要望していた。2023年度は過去最多の人的被害をもたらし、山間地の集落だけでなく、市街地にも出没していた。

 捕獲への財政支援は喫緊の課題になっており、追加は妥当な措置と言えよう。

 注目したいのは、方針案が過度な個体数減少にならないよう「捕獲ありき」ではなく、保護にも留意しバランスを取ったことだ。

 クマの個体数は、検討会で増加傾向と指摘されたものの数万頭とされ、現在指定管理鳥獣となっているニホンジカやイノシシと比較すると、圧倒的に少ない。

 九州のツキノワグマの絶滅は過度な捕獲が一因とされる。絶滅の危険が高い四国のツキノワグマを指定から除いたのは当然だろう。

 行き過ぎた捕獲にならないよう関係機関に周知徹底を図りたい。生息状況を調査する「モニタリング」もしっかり行う必要がある。

 肝心なのは、人とクマの生活圏を分ける「ゾーニング」を徹底することだ。

 かつては奥山にすむクマと、人里との間にあった手入れされた里山や水田が、緩衝地帯となっていた。しかし、過疎化や高齢化で耕作放棄地が拡大するなど荒廃が進んだため、クマの生息域が広がり、人の生活圏と近づいている。

 秋田県にかほ市は、ふるさと納税の一部を充て、「クマといい距離プロジェクト」を始めた。クマが潜みやすい人里周辺のやぶを刈り払い、人と野生動物の境界線を保つ狙いだ。

 各自治体や地域でも、知恵を出していきたい。果樹や生ごみの管理、電気柵設置といったクマを引き寄せない対策も大切だ。

 林業従事者や狩猟者の減少で人への警戒心が薄れていることも指摘されており、方針案には専門職員や捕獲従事者といった人材育成も盛り込んだ。

 クマを駆除したことで、ハンターが誹謗(ひぼう)中傷されると、担い手が不足することも危惧されている。こうしたことで被害対策が遅れないようにも図っていきたい。