保育士の増員(2024年2月12日『しんぶん赤旗』-「主張」)

世論広げさらに国を動かそう

 保育士1人が受け持つ子どもの人数を定めた保育所の職員配置基準が76年ぶりに見直されます。岸田文雄政権は昨年末に閣議決定した「こども未来戦略」に配置基準改正を盛り込みました。4~5歳児では、保育士1人のみる子どもの人数の基準を現在の30人から25人に改めるなどとします。基準改正は保育士や保護者らが国に対して長年求め続けてきました。現場の切実な要求と粘り強い運動、それと結んだ世論の広がりが国の政治を動かしています。

基準改正し育ちの保障を

 4~5歳児の配置基準は1948年の制度開始以来、一度も改善されてきませんでした。こども未来戦略の決定は、4~5歳児について、2024年度から職員配置改善に対応する加算措置を設け、「併せて最低基準の改正を行う」と明記しました。一方、経過措置として「当分の間は従前の基準により運営することも妨げない」と記しました。どの地域でも公立・私立を問わず、全施設で基準通りの保育士が確保できる措置を早急にとらなくてはなりません。

 1歳児の配置基準で、保育士1人がみる子どもの人数を6人から5人にすることを、25年度以降の「早期に」「改善を進める」と先送りしたのも大きな問題です。

 「人手が足りず、子どもに我慢を強いて満足できる保育ができず、辞めていく保育士がいる」「業務も忙しく休憩も取れず、余裕がなく疲弊している」。現場からの声は深刻です。保育士資格を持ちながら、働いていない保育士は有資格者の6割を超えます。

 全産業平均と比べても低い保育士の賃金を引き上げるなど処遇を改善し、希望をもって働き続けられる環境をつくることが政治の責任です。国は、基準改正の全面実施に責任を果たすべきです。

 日本の保育士配置基準は各国と比べてあまりに低く、子どもに安全で豊かな育ちを保障する基準になっていません。「子どもたちにもう1人保育士を!全国保護者実行委員会・同全国実行委員会」が昨年12月に公表したアンケート結果では、保護者(回答約7300人)の96%が配置基準は不足していると感じ、保育職員(回答約4000人)の82%が「人手が足りない」と答えました。両実行委員会はアンケートをもとに全ての子どもの年齢で配置基準を現在の約2倍にすることを提言しました。

 休憩時間、職員会議、休んだ職員をカバーできる体制など日々の保育を担う上で欠かせない体制にとどまらず、災害など緊急時に対応できる体制にすることも必要です。能登半島地震を目の当たりにし、保育中に地震が起きたら子どもの命と安全を守れるのかと、現場は危機感を募らせています。

 子どもの育ちを保障し、安全を守る体制の抜本強化は急務です。今回の配置基準改正にとどまらず、一層の引き上げを真剣に検討する時です。

子どもと子育てを支えよ

 岸田政権は、こども未来戦略に関わって今後3兆円半ばの予算を確保するとしますが、その財源を社会保障費削減や新たな負担を国民に押し付けることで捻出しようとしています。子育て支援と、ミサイルや基地強化を推し進める大軍拡は両立しません。子どもの現在と未来に責任を負わない政治を切り替えることが求められます。