聴覚障害者の逸失利益めぐる裁判 20日に2審判決 大阪高裁(2024年1月20日『NHKニュース』)

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聴覚障害がある女の子が亡くなった交通事故の損害賠償をめぐり、女の子が将来、得られるはずだった収入をどう算定するかが争われている裁判の2審の判決が20日、大阪高等裁判所で言い渡されます。
1審は労働者全体の平均賃金の85%をもとに算定していて、高裁の判断が注目されます。
7年前の平成30年、大阪・生野区でショベルカーが歩道に突っ込み、近くの聴覚支援学校に通っていた井出安優香さん(当時11)が亡くなり、遺族が運転手と勤務先の会社に損害賠償を求める訴えを起こしました。
裁判では、安優香さんが将来、得られるはずだった収入の「逸失利益」をどう算定するかが争われ、運転手側は労働者全体の平均賃金のおよそ6割にあたる聴覚障害者の賃金をもとにするよう主張していました。
1審の大阪地方裁判所は、おととし(令和5年)2月、「学習意欲があり、さまざまな就労可能性があったが、労働能力が制限される程度の障害があったことは否定できない」として労働者全体の平均賃金の85%をもととする判断を示し、遺族側が障害を前提にせず健常者と同じ水準を求め、控訴していました。
判決は20日午後2時から大阪高等裁判所で言い渡される予定で、障害がある子どもの収入の見込みを高裁がどう判断するか注目されます。
【「差別ない判決を」 両親が大阪高裁に署名提出】
井出安優香さんは、生まれた時から聴覚障害があり、事故に遭ったときは、聴覚支援学校からの下校途中でした。
安優香さんは、学校の宿題などに加え、毎日欠かさず自主的に勉強していたといいます。
亡くなる前日も算数のプリントをこなしていました。
また、知らない人にも積極的に声をかけて交流するなど、明るく社交的な性格だったということです。
今月14日、判決を前に安優香さんの両親は、大阪高等裁判所に対して差別のない公正な判決を求めて全国から集まったおよそ1万8000人分の署名を提出しました。
大阪高等裁判所に提出した署名の数は、これまでにあわせて2万8000人分を超えています。
父親の努さんは「娘にはまったく落ち度はありませんでした。それなのに、娘の将来を否定するようなことを言われ、娘を亡くした上にさらに傷つけられ、いわゆる二次被害を受けてきました。私は逸失利益が100パーセントと判断されるのが当然だと思っています」と話しました。
また、母親のさつ美さんは「障害があってもなくてもわずか11歳の子どもの将来の可能性は同じだと思います。娘のそれまでの努力を見て私は娘の将来を信じたいし、楽しみだった。それを奪っておいて障害者だから逸失利益が100パーセント認められないという主張はおかしいと思います」と訴えました。