会見で思いを述べる奥田恭正さん=2025年1月7日午後4時22分、東京都、板倉大地撮影
無罪判決が確定した奥田恭正さん(68)=名古屋市=が採取されたDNA型データなどを抹消するよう国に命じた名古屋高裁判決を受けて、奥田さんと弁護団が7日、警察庁を訪問し、データ抹消についての説明を受けた。奥田さんと弁護団が会見で明らかにした。
弁護団によると、警察庁では、DNA型や指紋、顔写真についてシステム上で「該当データがありません」などと表示された画面が印刷された紙を示された。奥田さんは印刷された時間が紙に記載されていることも確認し、「目の前で抹消してもらうのを確認できるのが一番だが、今考えられる最善と思うところはやっていただいたかと思う」と述べた。
一方、弁護団は捜査におけるDNA型データの採取や保管、抹消などの運用について「法律で定めなければいけない」と訴えた。
高裁判決によると、奥田さんは2016年に自宅前のマンション建設に対する抗議中に現場監督を突き飛ばした疑いで、愛知県警に逮捕されてDNA型などを採取された。暴行罪で起訴されたが、無罪が確定し、奥田さんは警察庁が保管するDNA型などのデータ抹消を求めて提訴。昨年8月に名古屋高裁が抹消を命じる判決を言い渡した。(板倉大地)
事件は「虚偽」勝ち取る 奥田恭正さん(薬局経営、管理薬剤師)(2024年9月24日『労基旬報』)
長谷川恭弘裁判長はデータ抹消を命じた一審・名古屋地裁判決を支持し、「国民は公権力からDNA型等のデータをみだりに取得されない自由だけでなく、みだりに保有、利用されない自由を有すると認められる」として国の控訴を棄却した。
さらに、データが国家公安委員会規則などで運用されている現状を批判し、「広く国民的議論を経た上での憲法の趣旨に沿った立法的な制度設計が望まれる」と諸外国のような立法化を求めた。 また、逮捕の決め手となった証言をした現場監督について「虚偽の被害を偽装し、虚偽の被害申告及び供述するなどした一連の行為は、原告を罪に陥れようとする極めて悪質な故意による不法行為で、原告が被った精神的苦痛は甚大だったと認められる」として一審判決を変更、現場監督と雇用した日本建設(大阪市)に慰謝料など計220万円の支払いを命じた。
一方、違法な逮捕や起訴などによって精神的苦痛を被ったとして国や愛知県に求めていた損害賠償は「(逮捕や勾留請求、起訴は)杜撰なものだったといえるものの、国家賠償法上違法とまでは認められない」として一審と同様、棄却した。
■警察、検察の国賠棄却