逆転の世界 読者アンケート
「5年後、今より豊かになっていますか」。アジア中心に世界の読者約2600人に聞いたところ、「豊かになる」との回答は日本が約44%と13カ国・地域で唯一、半数割れとなった。漠然とした将来不安は、これまで豊かさを享受してきた裏返しでもある。1月1日から始まる連載企画「逆転の世界」では、変わる価値観が生む今を描く。
日経電子版と日本経済新聞社の英語メディア「Nikkei Asia」の読者2645人にアンケート調査を実施した。
日本だけ「5年後の豊かさ」期待できず
日本では将来に不安を抱く人が多いことがわかった。5年後の生活が今より「豊かになる」と答えた日本の割合は43.8%で比較できる13カ国・地域で最も低かった。日本の読者からは、「物価高の先が見通せていない」(30代男性)や「温暖化や世界情勢の影響で、今より制約が増えると思う」(40代女性)と将来を悲観する声が多かった。
年代別にみると日本の20代は6割が5年後の生活が「豊かになる」と予想し、半数を下回る他の世代と差が開いた。「景気が上向き始めている」(20代男性)や「確実に少しは給料が上がる」(20代女性)と、経済の好循環に期待を寄せた。
世界全体の水準を示すNikkei Asiaの調査では71.7%の読者が将来の生活が豊かになると回答した。ベトナムが最も将来への期待が高く83.3%にのぼった。
「なんだかんだ」幸せ
「自国に生まれて幸せか」との問いには日本が89.3%、世界全体でも84.3%が「幸せだと感じる」と答えた。住む場所が違えど、多くの読者が今の生活に愛着を持っている。
日本でのアンケートの自由回答で目立ったのが、「なんだかんだ」という表現だ。不満がないわけではないが、一定程度満足している様子がうかがえる。
20代男性は「なんだかんだでウォシュレット(温水洗浄便座)があるから」と述べ、60代男性は「なんだかんだ言っても、物価も世界的には低いし医療制度もよい」と回答した。「平和で安全、清潔かつ自然や文化に恵まれた環境を享受できる」(30代男性)といった意見もあった。
安定か競争か
日本と世界で求める働き方の違いも浮き彫りになった。5年後、「競争が少なく同僚とほぼ同じ給料の会社」と「激しい競争で成果に応じて差がつく会社」のどちらで働きたいかをたずねた。日本は60%が「競争が少ない会社」を選んでおり、世界(37.2%)と比べ安定志向なことがわかった。競争が少ない会社を選んだ人が最も多かったのはタイ(61.1%)だった。
日本の読者の意見として、20代男性は「自分にそれほど卓越した能力がないと自覚しているから」との見方を示した。30代女性は「仕事で神経をすり減らしたくない」と回答した。
調査の方法 日経電子版とNikkei Asiaの読者2645人にアンケート調査を実施し、全13項目をたずねた。回答のうち居住地別で比較可能な13カ国・地域についてまとめた。
中国より米国重視
米国と中国はパートナーとしてどちらが重要か。この問いへの回答は日本と世界でくっきり分かれた。米国と答えた日本の読者は92.5%だったのに対して、世界の読者は67.9%にとどまった。いずれも米国が半分を上回っているが、距離感の違いが浮かび上がる結果になった。