座ったりダンスしたり…スタジアムを沸かせた尚志GKが明かす舞台裏。目標は忍耐力を尊敬する超絶レジェンド【選手権】(2024年12月29日『SOCCER DIGEST Web』)
PK戦の直前から出場。腕にはキャプテンマーク
PK戦の際、ピッチに座って相手を揺さぶった針生東。写真:窪田亮
[高校選手権・1回戦]東福岡(福岡)0(PK5-3)0 尚志(福島)/12月29日/NACK5スタジアム大宮
尚志は身体を張った守備で東福岡の攻撃を抑えつつ、得点チャンスを窺うも1点が遠い。結局80分を通してゴールを奪えず、スコアレスでPK戦に突入。すると、スタジアムを大いに沸かせたのが、直前の後半アディショナルタイムに投入されていたGK針生東(3年)だ。
なんと、相手選手が蹴る前にピッチに座ってみせたのである。キャプテンマークを巻いた針生はその後も、ゴールライン上でダンスのような独特のステップを踏むなど、パターンを変えて陽動作戦を仕掛け続けた。
結果的に勝利とPKストップには繋がらなかったものの、「できることはなんだってしてやる」という気概が伝わってくる、胸を熱くする行動だった。
試合後、その守護神に話を聞いた。まずはピッチに入った時の心境と今の気持ちを尋ねると、「『俺が止めて勝つんだ』『チームを勝たせる』っていう強い気持ちで入りました」「自分が止めてチームを勝利に導くことができなくて、とても悔しいです」というシンプルでストレートな答えが返ってきた。そのうえで、PK時の独特な動きに関しては、こう伝えてくれた。
「練習であの形でやっていて、止める回数も多かったので、自分的には自信を持って挑めたんですけど、やっぱ止められなかったのが悔しいです」
今後は大学でプレーする。「この経験を活かして、勝たせられるキーパーになる気持ちで挑んでいきたい」と誓う針生が、目標に掲げるのは日本代表GKのスーパーレジェンド、川島永嗣だ。
「色んなチームを渡り歩いて、海外で一番最初に活躍した選手ですし、第3キーパーの位置から何回もスタメンを、チャンスを掴んでいる忍耐力をとても尊敬しています。自分もそういう立場に置かれていたので、パフォーマンスをしっかり出せるように、川島選手みたいに活躍できるキーパーになりたいです」
悔しさを押し殺し、必死に言葉を絞り出した尚志の背番号16は、選手権での悔しさを糧に次のステージへ進む。
取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)