韓国南西部の空港で29日午前、乗客乗員181人が乗った旅客機が胴体着陸して炎上する事故があり、消防によりますと、2人が救助されましたがこれまでに177人の死亡が確認されたということです。
韓国政府によりますと、旅客機には、乗客175人と乗員6人のあわせて181人が搭乗し、乗客は、韓国人が173人、タイ人が2人だということです。
消防によりますと、29日午後6時前までに177人の死亡が確認されたということです。
これまでに機体の後部の付近から乗員2人が救助され、病院に搬送されたということです。
ソウルにある日本大使館の関係者によりますとこれまでのところ、事故が起きた旅客機に日本人が乗っているという情報はないということです。
消防は、救助された乗員の話などから鳥が衝突するバードストライクがあり、その後、エンジンにトラブルが発生したとしています。
さらに何らかの原因で航空機の車輪が正常に作動せずに、胴体着陸を試みたとみられるということです。
韓国政府は、事故調査委員会の調査官を現地に派遣していて、韓国メディアによりますと、事故調査委員会が旅客機のフライトレコーダーを回収したということで、事故の原因や経緯を詳しく調べています。
事故当時の状況明らかに
韓国の通信社、連合ニュースは韓国政府が会見で事故当時の状況を明らかにしたと伝え、それによりますと、午前8時57分ごろ管制塔が、着陸を試みた旅客機にバードストライクに注意するよう伝えたということです。
韓国政府は当初、その1分後としていましたが、正しくはその2分後の午前8時59分ごろ、旅客機のパイロットが救助を求める遭難信号を出し、午前9時ごろ、当初とは違う方向から滑走路への着陸を試みました。
そして、午前9時3分ごろ車輪が正常に作動しないまま着陸し、事故が起きたということです。
また、韓国政府は現地に派遣した事故調査委員会が旅客機のフライトレコーダーを回収したことを明らかにしたということです。今後、現場の状況をみながらボイスレコーダーも回収する予定だということです。
ロイター通信 旅客機が炎上した瞬間とされる映像配信
ロイター通信は、旅客機が着陸に失敗して炎上した瞬間とされる映像を配信しました。映像では、旅客機が滑走路の上を煙を出しながら胴体で滑ったあと滑走路から外れ、構造物に衝突して大きく炎上しています。
着陸やり直そうとし事故起こしたか
事故当時の詳しい状況について、韓国の通信社、連合ニュースは航空当局の話として、旅客機が1回目の着陸を試みたものの正常に着陸することができなくなったため再び上昇したあとに着陸をやり直そうとしたところ、事故が起きたと伝えています。
そして、事故現場の関係者の話として、着陸をやり直した際に胴体着陸を試みましたが、旅客機が滑走路の端に達するまでに速度を落としきれず、構造物に衝突して機体が破損し、火災が発生したとみられるとしています。
“ムアン空港周辺 渡り鳥生息 活発に活動” 韓国の航空当局
- 注目
専門家「油圧か電気どちらか あるいは両方使えなかった可能性」
韓国の公共放送KBSが一般の住宅から撮影されたものとして伝えた映像では、機体右側のエンジン後方から突然、煙のようなものが出たように見えます。
この映像について、全日空の元機長で航空評論家の井上伸一さんは、「バードストライクが起きたという話もあるので、あのタイミングでバードストライクが発生した可能性がある。エンジンに何らかの異常燃焼を起こすような状態が発生したために、一瞬煙が出たとみられる」と指摘しています。
また、旅客機が胴体着陸した際の映像については3つの車輪がいずれも出ていないように見えると指摘したうえで、左右両方の主翼にある「フラップ」と呼ばれる揚力を調整する装置も動いていないように見えると指摘しています。
これについて井上さんは「通常、胴体着陸をするときには可能なかぎり速度を落として着陸をする。今回の映像ではカメラの前をかなりのスピードを出して通過していた。これはフラップを下ろしていないために滑走路に進入する速度が速かったのが要因の1つと考えられる」と分析しています。
一方、バードストライクが原因で車輪やフラップが作動しなかった可能性については「バードストライクではエンジンの中に鳥が入ったりするが、車輪やフラップを下ろすこととは直接関連がないので、可能性とすれば低いと思う」と指摘しています。
その上で「通常、フラップは油圧を使って操作し、緊急時は電気でも動くようになっているが、油圧か電気のどちらか、あるいは両方が使えなかった可能性がある。またフラップ自体にトラブルがあったのか、そのあたりは今後の調査で明らかになると思う」と話しています。
【現場中継】国際部 鈴木記者
29日のニュース7で放送した内容です。【動画 1分32秒】
※動画は、データ放送ではご覧になれません。
チェジュ航空社長 「最高経営者として責任を痛感」
事故を受けてチェジュ航空のキム・イベ(金二培)社長が記者会見し、「事故に遭われた乗客と遺族の方々に深い哀悼の意と謝罪を申し上げます。事故の原因に関わらず、最高経営者として責任を痛感しています」と述べました。
その上で、「現在、事故の原因を推測することは難しく政府機関による調査の発表を待たなければならない状況です。早期の事態の収拾と乗客の家族の支援のために努力を尽くします。また、政府とともに事故の原因究明にも最善を尽くします」と述べました。
チェジュ航空 ホームページに謝罪文掲載
事故を受けてチェジュ航空はホームページに謝罪文を掲載し、「今回のムアン空港での事故により被害に遭われたすべての方に謝罪いたします。まず、事態の収拾にあらゆる努力を尽くします。ご心配をおかけして申し訳ございません」としています。
韓国のLCC チェジュ航空 国内線と国際線62路線運航
“12月に就航したばかり” 連合ニュースなど
韓国の通信社、連合ニュースなどによりますと、事故が起きたのは、ムアンとタイのバンコクを週に4往復するチェジュ航空の定期便で、12月8日に就航したばかりだということです。
フライトレーダーは
ボーイング737型機とは
韓国政府 ムアンを「特別災難地域」に指定
事故を受けて、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の職務を代行している、チェ・サンモク(崔相穆)副首相兼企画財政相は、事故が起きたムアンを、「特別災難地域」に指定すると発表しました。
「特別災難地域」は通常、災害などの際に指定され、政府が財政支援を行って補償を進めることになります。
チェ副首相はムアンで行われた対策本部での会議で「すべての関係機関が協力し、救助と事故の対応に総力を挙げる。対策本部を中心に必要なすべての支援を投入している」と述べ、国を挙げて対応する考えを強調しました。
また、チェ副首相は事故の原因を徹底して調べ再発防止策を講じるとしています。
石破首相がお見舞いのメッセージ
韓国の旅客機の事故を受けて、石破総理大臣は、ユン・ソンニョル大統領の職務を代行しているチェ・サンモク副首相兼企画財政相に宛ててお見舞いのメッセージを出しました。
この中で石破総理大臣は「痛ましい事故により多くの尊い命が失われたことに深い悲しみを覚えている。犠牲になられた方々とご遺族に対し心からの哀悼の意を表すとともに、負傷された方々の1日も早い快復をお祈りする」としています。