日銀職員はどのような仕事をしているのか
“秘密会合”が開かれる氷川分館は六本木の緑地の中に
利上げが進めば株価が下がる。植田和男・日銀総裁の追加利上げ発表をきっかけとした2024年8月の株価大暴落は記憶に新しいが、株価以上に心配なのは国民生活への直接的な影響だ。経済評論家の荻原博子氏が指摘する。
「日銀の利上げは景気を冷ます、不景気にする政策です。わかりやすいのは住宅ローン金利が上がる。ゼロ金利時代に変動型で住宅ローンを借りた人が多いが、残債5000万円なら、金利が2%上がれば月々の返済は5万円ほど増える。
返済計画の見直しを迫られるでしょう。しかも、利上げは円高を招くので、輸出企業の収益が下がる。賃上げも進まなくなる可能性があります。物価上昇は多少抑えられるかもしれないが、資源高は続いており、それに伴う値上げは続くと考えられる」
日銀の金融政策の舵取り次第で国民は生活に深刻な影響を受ける。
利益の基礎は「通貨発行益」。日銀券(紙幣)を発行することによる儲けである。2023年度の利益(当期剰余金)は過去最高の2兆2872億円に達し、大半が国庫に納付された。
日銀総裁の報酬はかつて約5000万円だったが、「総理大臣より給料が高い」と批判されて引き下げられた経緯があり、総裁の年収は3646万円(令和5年度 業務概況書の「役員報酬」より)。役員の報酬水準も民間大手企業ほど高くはない。
ところが、本誌・週刊ポストが調べると、日銀の職員たちはこのご時世に特権的とも言える好待遇であることが明らかになった。
日銀業務概況によると、日銀の常勤職員は4552人(2024年3月末)で、職員給与の総額は442億円(2024年度予算)。日銀広報課によると「常勤職員の令和5年度の年間給与額の平均は、846.9万円」というが、それだけではない。
日銀マンはどのように採用されるのか
日銀マンの採用から、仕事の内容、待遇を具体的に見ていこう。実は、日銀の採用でペーパーテストはない。日銀OBの経済評論家・池田健三郎氏が語る。
「日銀には総合職、特定職、一般職があるが、入行試験は面接、つまり口頭試問のみです。私が入った時は50人ほどの総合職採用の3~4割が東大で、何人か地方大学の採用枠もあった。金沢大学出身の私は地方枠で、最初は金沢で2回面接し、パスすると東京で面接。私は法学部だったので法律や一般常識の問題を口頭で出されて受け答えをする。東京で10回ほど面接を受けて採用された」
採用方法は現在もほとんど変わっていない。
「面接試験により採用選考を行なっています。本店一般職および応募倍率が非常に高い一部の支店一般職のみ、ウエブ試験も行なっていますが、国家公務員のような統一の採用試験は実施しておりません」(日銀広報課)
「銀行の銀行」と呼ばれる日銀は、取引金融機関との間で買い出し、当座預金の受け払いなどを行なっているが、民間銀行と違って一般国民との取引の窓口業務はない。
総合職の仕事は「シンクタンクの研究員」に似ていると言われる。
「業務は調査か金融がメイン。調査は日銀の短観とかレポートの元となるデータ、情報を集める仕事です。支店ではもっぱら、地元の経営者からデータを取ったり、インタビューを行なって支店長にレポートを提出する。当時は、新人でも支店の公用車で地元の企業や工場を回って調査の仕事をしていました」(池田氏)
※週刊ポスト2025年1月3・10日号