“石破らしさ”復活?国会答弁を“徹底分析” 見えた「変化」とは(2024年12月14日『日テレNEWS NNN』)

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就任後、初となる予算委員会に臨んだ石破首相。一時は「石破らしさ」を失ったと言われた首相だったが、予算委員会で“変化”が。「熟議の国会」を掲げる中、首相はどのような答弁を行ったかを徹底分析すると、2つの「こだわり」が浮かび上がった。
首相が初の予算委 「石破らしさ」取り戻した?就任後、初となる予算委員会に臨んだ石破首相。少数与党国会で、野党の協力を取り付け補正予算案は、なんとか衆議院を通過した。「予想より順調に審議は進んだ」(政府関係者)という国会審議だったが、その裏には「首相らしさを取り戻した答弁」(立憲幹部)があったとの指摘もあがった。
通常、予算委員会の答弁は野党議員と丁々発止の議論となり、本会議で行われる代表質問より“難易度が高い”とされる。しかし、首相は周囲に「代表質問よりも予算委員会の方がいい。柔軟な頭で答弁できる」と自信を見せていた。首相は予算委員会でどんな答弁を行ったのか?日本テレビでは、衆議院通過までの6日間にわたる首相答弁を徹底分析。さらに首相周辺の取材などから2つの「こだわり」が浮かび上がった。
■首相答弁を徹底分析 浮かび上がった2つの「こだわり」
【こだわり①「わかりやすさ」】
予算委員会の朝、首相は早いときには5時台に首相公邸に出勤し秘書官らと打ち合わせを行っていた。そこでこだわったのは、答弁の「わかりやすさ」(首相周辺)だったという。事前打ち合わせで用意された原稿に対して、首相は「これで、本当に国民がわかるのか?」と話し、答弁の準備をしていたという。
首相が「わかりやすさ」にこだわった事が垣間見えたシーンが、6日の参院予算委員会であった。立憲民主党の小沼議員に政治資金規正法自民党改正案を問われた際、自身の答弁について「わからない」と指摘され首相はこう応えた。
「すみません。役人みたいな言い方をして恐縮でございます」
野党側から「わからない」と言われたことを素直に受け入れた首相。直後に言い方を変え「わかりやすい」説明を答弁し直す姿勢が見られた。
【こだわり②「丁寧さ」】
もう一つ、特徴的だったのは首相の「丁寧な姿勢」だ。具体的には、相手が言ったことに対して「おっしゃることには全て同意でございます」「おっしゃることは、なるほどと考えております」と、相手の意見に「賛同」する場面が目立った。
丁寧さが目立った「石破語」としては「各党の議論の場において、ご提案をいただき、ご教導賜りたい」など、相手を立てる言い回し。これは、これまでの首相答弁ではあまりなかった言い方と言える。立憲民主党の幹部からは、こうした丁寧さに「石破さんは攻めづらい」という声も聞こえた。
■石破答弁を徹底分析 答弁数は岸田首相の“倍以上”
一方、「丁寧」「わかりやすさ」を求める「石破答弁」は長い特徴があった。日本テレビ政治部では、この国会での首相答弁と、去年の岸田首相との答弁を数字で比較してみた。対象としたのは臨時国会での参議院予算委員会の初日、6時間強の答弁。結果は以下の通り。
▶岸田首相(2023年10月31日) 約21000語
▶石破首相(2024年12月 6日) 約43000語
分析の結果、「石破答弁」は岸田首相より、語句数にして2倍以上の長さだったことがわかった。一般論として首相答弁は「長ければ失言リスクが高い」とされ、短い方がリスクが低いとされる。ある政府関係者は「丁寧な答弁はいいが、首相答弁が長すぎて、失言がないかハラハラした」と話す。また、政権幹部は「参議院の委員会の答弁のあと、『答弁が長すぎる』と注意された」事を明かした。
■首相答弁に野党からは批判も「正面から答えてない」
こうしたスタイルに野党側からは批判も出ている。「長い割に質問に正面から答えていない」という指摘だ。10日の衆院予算委員会立憲民主党の本庄議員は「長い解説ではなくて端的な回答を」と注文を付けた。他にも「結論を先に言ってください」などと指摘される場面もあったが、石破首相の答弁は変わらず、最後には「よく検討してまいりたい」と具体的には答えないシーンも目立った。
ここまでは、大きな失言もなく「石破らしさ」を取り戻し答弁に臨んでいる首相。今後は「わかりやすさ」「丁寧」さに加えて、質問に正面から答える、長さだけでなく「中身の充実」も求められることになる。