石破茂首相VS野田佳彦氏、因縁の衆院予算委で〝攻守交代〟 応酬かみ合わず平行線(2024年12月5日『産経新聞』)

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衆院予算委員会石破茂首相(右)に質問する立憲民主党野田佳彦代表(左)=5日午前、国会内(春名中撮影)
5日の衆院予算委員会では、石破茂首相と立憲民主党野田佳彦代表が直接対決に臨んだ。両氏にとって衆院予算委は因縁の舞台だ。民主党の野田政権時代、石破首相は野党・自民党で予算委筆頭理事を務め、政権奪還を狙って野田氏を追及した。立場が入れ替わった2人の注目の対決となったが、焦点の政治改革を巡る議論は空回りし、かみ合った応酬とは言いがたかった。
韓国・北朝鮮動向では認識共有
「こういう形で対峙して大変感慨深いものがある。12年前は私がそちらに座っていた。錚々たるメンバーに連日鍛えていただいた」
民主政権時代をこう振り返った野田氏は、論戦を「ご恩返し」と位置づけて質問を切り出した。
初めに野田氏が取り上げたのは韓国での非常戒厳宣布や北朝鮮の動向だった。
首相が「安全保障の状況が根底から変わるかもしれない」と答えると、野田氏も「次元の違う危機的な状況に入りつつある」と応じ、与野党のトップが東アジア情勢についておおむね意識を共有している姿を印象づけた。
政治改革巡り平行線
しかし、政治改革に話題が移ると、やり取りは平行線をたどるようになる。
自民派閥政治資金パーティー収入不記載事件の再調査を求めた野田氏に対し、首相は「新たな事実が出れば、党として調査することもあるだろう」とかわし、要求をはねつけた。
続いて野田氏は企業・団体献金の禁止を主張した。しかし、首相は「禁止よりも公開だ」と譲らず、「いかにして有権者の判断に委ねるだけの透明性、公開性を確保するかということだ」と持論を展開した。
野田氏が「年内に企業・団体献金の問題も含めて決着をつけようではないか」と迫ると、首相は「いつまで、と申し上げることは適当だと思っていないが、いつまでも引き延ばしていいというものではない」。
禅問答のような答弁に、野田氏は「最低限『いつまでに』ということをお答えいただきたい」と食い下がったが、首相は「議論の熟度を上げ、頻度を上げ、どれほどそれが煮詰まっていくかということ」と返し、最後までペースを崩すことはなかった。
質疑後、野田氏は「食い違いがいっぱいあった」と記者団に語り、時期の明言を避けた首相を「無責任だ」と批判した。〝攻守交代〟となった予算委の戦果は、野田氏にとって満足のいくものではなかったようだ。(松本学)

立民・野田代表「食い違い多かった」 石破首相と衆院予算委で初対決(2024年12月5日『産経新聞』)
 
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衆院予算委員会で質問する立憲民主党野田佳彦代表=5日午前(春名中撮影)
 
立憲民主党野田佳彦代表は5日、衆院予算委員会での石破茂首相との政治改革を巡るやり取りについて「残念ながら食い違いがいっぱいあった。政治改革特別委員会や予算委でこれからも詰めていきたい」と述べた。質疑後、国会内で記者団の取材に応じた。
企業・団体献金の禁止に関して首相が結論を出す時期を明言しなかったことについては、「無責任だ。選挙で示された民意からかなりかけ離れた反省のない態度だ」と批判した。
一方、朝鮮半島情勢に関する首相との議論については「今の動きについての危機感は共有できた」と満足気に語った。立民・野田代表「食い違い多かった」

30年ぶり野党予算委員長、立民・安住氏 与党より野党に漂う緊張「目の前にいるから…」(2024年12月5日『産経新聞』)
 
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立憲民主党安住淳予算委員長=5日午前、国会内(春名中撮影)
5日の衆院予算委員会立憲民主党安住淳予算委員長の〝デビュー戦〟となった。先の衆院選自民党少数与党に転落したあおりで、30年ぶりに野党議員が「国会の花形」である予算委を仕切ることになった。安住氏を巡っては、公平な行司役を自任する一方、令和2年2月に予算委質疑を伝える新聞各紙を張り出し「くず」などと論評した経緯もある。予算委の様相は変わるのか─傍聴に訪れて印象に残ったのがヤジの少なさに加え、野党席を含めて漂う緊張感だった。
椅子の座り心地で首相と談笑
5日午前9時、国会内の第1委員室。10月の第1次石破内閣発足以降、初めての予算委が始まった。
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衆院予算委員会に臨む石破茂首相(左)。右は立憲民主党安住淳委員長=5日午前、国会内(春名中撮影)
「みなさん、おはようございます」
直前まで安住氏も隣に控える石破茂首相らと委員長椅子の座り心地について談笑していたが、自身の一声で喧騒を収めた。
予算委員長は委員会日程や委員の発言時間などを決める上、不規則発言を繰り返す委員らの退席を命じることができるなど議事進行で権限を持つ。
安住氏が離席した際、交代で委員長席に座った立民中堅も周囲に「緊張した…」と漏らすほど。
一方の安住氏は手慣れた様子で議事を進めていく。
「熟議の国会」
安住氏は国会運営を差配する国対委員長経験が長い。11月13日に委員長就任が決まった当時、記者団には「黒衣に徹する。『熟議の国会』が実現すればいい」と語っていた。
この日の予算委では割り当て時間をややオーバーした自民党山下貴司元法相に対して「時間外の質疑は厳に慎むようにお願いします」と注意を促したが、党派の違いで〝ランク付け〟するようなことはなかった。地元が同じ宮城県の自民の小野寺五典政調会長も「熟議の議論が必要だ」と述べ、安住氏の言葉に呼応するような場面もあった。
逆に野党席には若干の緊張感が漂っている。後方に先の衆院選で当選した新人議員らが神妙な面持ちで見学に臨んでいるためか。
政治改革などに関する首相の答弁に対し、散発的にヤジが上がったが、近年の委員会に比べて全般的に少ない印象だ。
安住氏は同い年の党幹部も面罵するなど、こわもての一面もある。
立民中堅は「与党の方こそ緊張しているのでは」というが、「実は私も眠たい一瞬があったが、(安住氏が)目の前にいるから目を閉じなかった」と明かす。
「速やかに協議」
午前の質疑でざわついたのが、立民の野田佳彦代表が政治とカネを巡る疑惑で自民の旧安倍派事務局長の参考人招致を求めた際だ。
典型的な委員長の答えは、「後刻理事会で協議します」というものだが、安住氏は「理事会で速やかに協議します」と「速やかに」が盛り込まれた。
この変化について、立民の若手は「安住さん、本当に理事会で決めてしまうのかもしれない」とやや驚いた様子で語った。
安住氏は周囲に「次第にだれてガヤガヤしてくるんだよ。そうしたら『立民うるさーい』と叫んでやろうか」と漏らし、公平な〝行司役〟をアピールする。(奥原慎平)