17日投開票の兵庫県知事選で、自民党兵庫県連は1日夜、選挙対策委員会を開き、正式に自主投票とした上で、再選を目指して立候補した前知事の斎藤元彦氏(46)の支援を容認することを決めた。自民県議団は斎藤氏の支援を禁止したが、他の地方議員の反発を受けて県連としては見送った。
兵庫県知事選挙で維新、公認なく対決姿勢を鮮明にできず…衆院議員選挙の比例では33万票減
知事選を巡っては、県議会(定数86)最大会派の自民県議団(37人)が10月27日、独自候補の擁立を断念し、自主投票とする方針を決定。斎藤氏がパワハラなどの疑惑で内部告発された問題を巡り、県議会が全会一致で斎藤氏の不信任を決議した経緯から、斎藤氏の支援は禁止とした。
これに対し、明石市議会の自民市議団が同29日に記者会見を開き、「自主投票なのに支援を禁じるのは問題だ」と撤回を要求。関係者によると、1日の県連選対委員会でも、一部候補の支援を制限することを問題視する意見が出たため、斎藤氏の支援禁止までは踏み込まないことにしたという。
一方、神戸市議会(定数65)最大会派の自民党市議団(15人)は2日、神戸市内で記者会見を開き、日本維新の会を離党した前参院議員の清水貴之氏(50)を支援する方針を明らかにした。坊恭寿市議は「政策について考えがほぼ同じで、最良の候補だ」と語った。
県議団の一部は、前同県尼崎市長の稲村和美氏(51)を支援している。
知事選には他に、医師の大沢芳清氏(61)(共産党推薦)、レコード会社社長の福本繁幸氏(58)、政治団体代表の立花孝志氏(57)、情報分析会社社長の木島洋嗣氏(49)が立候補している。
兵庫知事選告示/県政の再建へ政策論争を(2024年11月1日『神戸新聞』-「社説」)
前兵庫県知事の失職に伴う知事選が告示され、17日の投開票に向けた論戦が始まった。
告発文書問題への対応を巡り、県議会の不信任決議を受けた斎藤元彦氏による県政運営の是非や、知事の資質が争点となる。県民の暮らしに深く関わる選択だ。有権者は候補者の主張に耳を傾け、公約を吟味して1票を投じてほしい。
立候補したのは、いずれも無所属で、前参院議員の清水貴之氏(50)▽前尼崎市長の稲村和美氏(52)▽前知事の斎藤元彦氏(47)▽病院院長の大沢芳清氏(61)=共産推薦▽会社社長の福本繁幸氏(58)▽政治団体代表の立花孝志氏(57)▽会社社長の木島洋嗣氏(49)-の7人。
2021年の前回知事選で斎藤氏を推薦した自民党は、県議団が独自候補擁立を断念した。再選を目指す斎藤氏の支援を禁じた上で自主投票としたが、一部市議が反発している。同じく前回斎藤氏を推薦した日本維新の会は離党した清水氏を支援する。与党が大敗した衆院選の結果がどう影響するかも注目される。
選挙戦でまず問われるのは、失墜した県政の信頼回復だろう。
文書問題は3月、元西播磨県民局長が斎藤氏のパワハラなどの疑惑を告発し表面化した。県は元局長を内部調査で懲戒処分としたが、公益通報者として保護すべきだとの批判があり、県議会が調査特別委員会(百条委員会)で究明を続けている。
斎藤氏は文書問題について「反省すべきは反省し改める」と訴えた。清水氏は「悪い印象を拭い、よい形で兵庫を発信」、稲村氏は「対話と信頼で抜本改革」、大沢氏は「県政の根幹を正す」、福本氏は「長がかわれば県が良くなる」と主張した。
神戸新聞社が有権者に争点を尋ねた調査では「知事の資質」が29・0%と最多で、「県政の再建」が23・0%と続く。斎藤氏は一連の問題への説明を尽くすことが求められる。混乱が続く県政の立て直しや公益通報制度の在り方について、他の候補も具体策を語ってもらいたい。
斎藤県政が3年間に打ち出した施策への評価も焦点となる。
実績に掲げる行財政改革は道半ばだ。企業業績回復による税収増もあり、県の貯金に当たる財政調整基金は23年度末で約30年ぶりに100億円を超えたものの、阪神・淡路大震災で背負った債務は今も重い。