【オスロ=梁田真樹子】ノルウェーのノーベル賞委員会は11日、2024年のノーベル平和賞を被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」(事務局・東京)に授与すると発表した。被爆体験の伝承などを通じて核兵器廃絶を世界に訴え続けていることが評価された。日本からの平和賞受賞は、非核三原則を提唱した1974年の佐藤栄作元首相以来で2例目となる。
日本からの受賞、佐藤栄作元首相以来
ノーベル賞委員会のヨルゲン・ワトネ・フリドネス委員長は「核兵器のない世界を実現するために努力し、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきた」と授賞理由を説明した。ウクライナを侵略するロシアによる核の威嚇をはじめ核兵器が再び使用されかねない事態への懸念も示した。
核兵器の開発や保有などを法的に禁止する「核兵器禁止条約」の締結に向けた世界の市民団体の連合体「核兵器廃絶国際キャンペーン」( ICANアイキャン 、事務局スイス・ジュネーブ)の国際的な署名活動に協力した。2017年7月には、核兵器禁止条約が国連本部で採択され、ICANは17年のノーベル平和賞を受賞した。
だが、世界は核兵器の廃絶には向かっていない。米露間の核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」は26年に期限切れを迎えるが、後継枠組みの協議は進んでいない。中国は米国に対抗し、核兵器の拡充を急いでいる。ノーベル賞委員会がICANに続いて被団協に平和賞授与を決めたのは、核の使用につながる動きに警鐘を鳴らす狙いがある。
米軍による1945年8月の広島、長崎への原爆投下では、熱線や爆風、火災、放射線により、45年末までに計約21万人が死亡したとされる。
「地球上から核兵器がなくなるまで…」
記者会見で受賞が決まった喜びを語る被団協の箕牧智之代表委員(右端)(11日午後7時、広島市中区で)=東直哉撮影
被団協代表委員の 箕牧みまき 智之さん(82)は11日夜、記者会見を開き、「世界中が平和であってほしい。平和であれば、みんな幸せだ」と訴えた。今も各地で続く争いについて「戦争は人殺しだ」と非難した。