神宮外苑の樹木伐採は743→619本に 三井不動産が見直し案「植樹も大幅に増やす」 工事本格化へ(2024年9月9日『東京新聞』)

 
 樹木の大量伐採などに批判がある東京・明治神宮外苑地区の再開発を巡り、事業者代表の三井不動産(東京)は9日、伐採本数を124本減らすなど計画の見直し案を公表した。東京都から昨年9月に樹木の具体的な保全策を示すよう求められていた。事業者側は都の審議会や住民説明会を経て、伐採に着手する方針だ。(押川恵理子、森本智之)
三井不動産が開発再開を発表した神宮外苑=東京都港区で、本社ヘリ「あさづる」から(安江実撮影)

三井不動産が開発再開を発表した神宮外苑=東京都港区で、本社ヘリ「あさづる」から(安江実撮影)

◆1904本のうち743本が伐採予定だった

 港区と新宿区にまたがる神宮外苑の再開発は、老朽化した神宮球場秩父宮ラグビー場を建て替え、高層ビルを新たに建てる。
 樹木1904本のうち高さ3メートル以上の743本が伐採される予定だった。名所のイチョウ並木は伐採の対象外だが、隣接して新球場が建設されるため生育への悪影響が懸念されていた。
 今回の見直し案では、新たなラグビー場などの整備を工夫することで66本を保存し、16本を移植するほか、立ち枯れなどの42本を数字から除くことで、伐採本数は計619本に減る。

◆植樹は837→1098本に

 イチョウ並木の保全では、生育環境への影響を抑えるため、イチョウと新球場との距離を従来の約8メートルから約18.3メートルに広げる。
 9日の会見で三井不動産ビルディング本部ビルディング事業二部長の対中(たいなか)雅人氏は「計画の見直しで、伐採する樹木をさらに減らし、新たに植える樹木を大幅に増やした」と説明した。植樹は当初計画の837本から261本増やし、1098本にするという。
 樹木の伐採を巡って、事業者は昨年9月中にも始める計画だった。だが、反対の声はやまず、国際NGO「国際記念物遺跡会議会議」(イコモス、本部パリ)が計画撤回を求めるヘリテージ・アラートを発出した直後、都は保全策を示すよう事業者に通知した。事業者側は当初保全策は「2023年末から24年年明けをメドに提出する」としていたが、大幅に遅れていた。
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小池百合子知事「理解、共感が得られるように説明を」
 明治神宮外苑地区の再開発で、事業者側が東京都の求めに応じて樹木の伐採本数を減らすなどした計画見直し案を示したことについて、小池百合子知事は9日午前、都庁で報道陣の問いかけに「所管局の方に届いていると報告を受けている。これから中身を精査していくことになる。事業者の皆さんには都民の皆さんの理解、共感が得られるように説明していただきたい」と答えた。
明治神宮外苑地区の再開発を巡り、計画見直し案についてコメントする東京都の小池百合子知事=9日午前、都庁で

明治神宮外苑地区の再開発を巡り、計画見直し案についてコメントする東京都の小池百合子知事=9日午前、都庁で

 都が昨年9月、樹木保全の具体策を示すよう事業者に要請した際、小池知事は「事業者にはしっかり対応していただきたい」と述べていた。また、今年8月下旬の定例記者会見でも、事業者の説明責任について「きちんと整え、伝えていくのは事業者の責務」などと話していた。(奥野斐)

明治神宮外苑の再開発事業 28.4ヘクタールの敷地で、老朽化した秩父宮ラグビー場神宮球場の敷地を入れ替えてそれぞれ建て替えるほか、高さ約190メートル、185メートル、80メートルの高層ビルなどを新たに建てる。一般市民がスポーツを楽しむ軟式野球場などは廃止される。樹木の伐採や景観の悪化について坂本龍一氏や村上春樹氏、桑田佳祐氏ら文化人も批判。計画反対のネット署名は23万を超えた。事業者は明治神宮日本スポーツ振興センター(JSC)、伊藤忠商事三井不動産。東京都が2023年2月に事業計画を承認し、翌3月に明治神宮第2球場の解体に着手した。都が同年9月に樹木の保全策を要請し、工事は中断していた。当初の予定では再開発の完了は36年、総事業費は3940億円を見込んでいた。