候補者乱立の自民党総裁選が盛り上がりを見せるが、自民党派閥の裏金問題に端を発した「政治改革」が総裁選のお祭り騒ぎで忘れ去られてはいないか。そう憂慮するのが、選挙制度改革の超党派議連を立ち上げた自民党の古川禎久元法相(59歳)と国民民主党の古川元久国対委員長(58歳)だ。同じ年生まれで名前は一文字違い、ともに東大法学部卒という経歴で、政界では「古古コンビ」と呼ばれている。(取材・文/峰田理津子)
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小泉首相に逆らって党を追われたり…
古川元久氏
禎久私は初挑戦した'96年衆院選で落選し、次の'00年衆院選でも落選。'03年の衆院選で初当選を果たして自民党に追加公認されました。当時は、選挙制度が小選挙区制になっても、党内にはまだ中選挙時代のムードが残っていた。それが劇的に変わったのが'05年の郵政選挙でした。だって、執行部の方針に逆らうと党を追い出され、刺客が送られてくるんですよ。私自身、郵政民営化に反対票を投じて離党し、無所属での戦いを余儀なくされた。政界の雰囲気は、あの郵政選挙でガラッと変わったと思う。
元久ヨッシーは7年間の浪人生活を経てようやく当選したのに、人気者の小泉純一郎首相(当時)に逆らって党を追われたり、安倍政権でも石破派の事務総長を務めて冷遇されたり、もっと器用に立ち回ることもできただろうに、筋を通してあえて困難な道を進んだ。そこがいいところですよ。
―9月27日に行われる自民党総裁選で誰が選ばれるかによって、政治改革の帰趨にも影響がありそうです。
禎久無様な裏金問題を引き起こし、政治に対する国民の信頼を大きく毀損した自民党にとって、今回の総裁選は剣が峰です。相も変わらぬ派閥の論理や、誰なら国政選挙に勝てるかという基準でトップを選ぶ総裁選になれば、今度こそ国民から見放されるでしょう。
元久選挙のために国民人気が高い党首を選ぼうとする傾向にも、小選挙区制が影響を及ぼしている。党首や政党に「風」が吹けば、候補者本人の資質にかかわらず、党の看板だけで当選できるからです。しかし、実力ではなく人気でトップを選ぶと、すぐに馬脚が現れ、「次の選挙に勝てない」となると、すぐまた新しい人気者に表紙を取り替えるという悪循環がこの30年間続いてきた。
「政界再編」も遠くない!?
古川禎久氏
―それでも自民党が変わらず、野党にも期待ができないのなら、いっそ「政界再編」を、と望む声も聞こえてきます。
元久平成時代に目指した「二大政党制の実現」というチャレンジは失敗に終わりました。そもそも日本には英米の階級対立や南北対立のような二大政党の基となった社会的対立構造がない。それを、無理やり二大政党を作ろうとしたことで、逆に「一強多弱」となり、議会制度が形骸化してしまいました。
禎久日本政治は未だに戦後の55年体制を引きずっている。しかし、世界情勢を見てもこれだけ時代が変わっているのだから、モデルチェンジしなければ日本の舵取りはできません。新しい政党政治のあり方、あるいは新しい憲政の常道を構築する必要がある。
元久二人でやってきたさまざまな超党派議連は、次の政治の核となるテーマを扱ってきたつもりです。思想で言えば「小日本主義」を掲げた宰相・石橋湛山。「経世済民」を第一に考え、独立自尊、寛容、現実主義を軸にした政治志向です。産業政策では、医療防災のような国民の安心安全につながる産業を経済の中心にする試み。そして政治に必須な国民の政治に対する信頼を取り戻すための政治改革。その柱の一つが選挙制度改革です。
禎久今の政治制度のままで、日本が直面する内外の課題に対応できるのか。大きな時代のうねりにきちんと対応できる制度はどういうものなのか。政治資金の透明化、国会改革、選挙制度改革などを一体にして、未来に向けて改革していかなければならない。ここまで政治が信頼を失ってしまった今だからこそ、「令和の政治改革」を一気にやるチャンスにもなり得る。
元久来年は昭和で言えば100年の節目です。「政治とカネ」に象徴される昭和から続く古い政治から一日も早く脱却し、令和に相応しい政治体制を構築する必要があります。現在の与野党の枠を超えて超党派で課題に取り組む中から、新しい政治体制を作っていきたいと思います。
「週刊現代」2024年9月7日号より